第二章:悲劇の渦の中へ <前奏>

高尾山口駅。
電車を降りて空模様をうかがってみた。運が良いのか悪いのか、空にはぽつんぽつんと青空が・・
なぜなら、ここで大雨になっていれば、僕たちはその後の悲劇を知らずに家に引き返していたかも知れないのであったからだ。

高尾山口駅休憩所。
僕たちは同じ目的の人を捜すため駅の休憩所でしばしの安楽を味わっていた。
20分くらいたって、突然、空模様が一変したのだスコールだ!!この一言で僕たちは絶望したのだった。
今日は完全に観測会は中止だと思った。僕たちは帰ろうとして荷物を整理していると、「どうせここまできたのだから、高尾山に登ろう・・・」まるで悪魔にでもとりつかれたとしか思えない無謀な一言がとびだしたのであった。「雨の中をか・・・」という僕の問いに答える者はいなかった。
今でも、あの一言は誰が言ったのか判ってはいない。
何分かして同じ目的で来た大学生の先輩が来たのだった。ぼくたちはまるで救世主にでも出会ったように喜んだ。
この先輩が来たとたんに雨もやみ、風もやみ、みんな元気がでたようだった。そして、僕たちはまずケーブルカーの高尾山口駅に向かった。
途中で食料を買い込んで前進した。駅の手前で同じ目的の人、2名に出会った。
高一と高三の人であった。ここで会った高一の稲葉君は、最後まで僕たちにつき合ってくれた犠牲者でもあった。

−前奏 了−

ケーブルカー高尾山口駅
駅についたとたん、私たちは悲惨のさなかに追いやられたのだった。
僕たちはすっかり観光用のケーブルカーということを忘れていたのだった。時はすでにPM6:30、もう、とっくの昔に動いていないのである。
これにより、またみんなの心が沈んだのであった。なぜなら、登山道を使って登るとものすごく時間がかかるからである。「ケーブルカーの線路を登ろう・・・」
またしても、誰が言ったのか判らない一言がみんなの心を動かしたのであった。
なぜみんなが安易にこれに賛成したのか、それは次の4つが挙げられる。

@このケーブルカーに乗ったことがみんななかったから。
Aみんな好奇心旺盛だったから。
B最高角度31度15分(日本一)ということを知らなかったから。
C高尾山頂への近道だと思いこんだから。

・・・である。第二の悲惨はここから始まったのだった。
最初はケーブルカーの線路も登山道より楽であった。それが第一トンネルを抜けたとたんに一変した。
前方はすごい勾配だったのである。みんな登れるかどうかわからなくなってしまったのである。
しかし、僕たちは水曜スペシャルの探検隊気取りで悲惨のさなかをまた、登り始めたのであった。
鉄橋だ!!」その一言で僕たちは完全に気色を失ったのであった。なんと長い鉄橋だ。
その上、高い。また、手すりもなく歩くところは、なんと幅30cmの木の板があるだけであった。
ほとんど天に助けを求めながら渡った。足をすべらせながらも・・・。
なんとかして9名全員無事にわたった。


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