ドキュメント 

   白昼の金星を見る


白昼に星を見る−それは我々天研の夢であった。
昼間に星は見えない!」この常識をうち破るべく去る11月3日早朝、我々は集合し、観測を始めていた。まだ太陽は昇っていない。
とても寒い朝であった。ある者はカッパを着込み、またある者はズボンを3枚はいていた。
かくして約1時間にわたる寒さと、眠けとそして太陽との長い戦いが始まったのである。

6時41分、空がだいぶ明るくなってきた。
満天の星空はいつの間にか月と金星を残してみな太陽の光にかき消されてしまっていた。
それでも金星の移動は予想以上に速、1人が懸命に望遠鏡を操作していた。
6時46分、我々は早くも天研始まって以来の大問題に直面していた。ああ、なぜこの世に窓枠などというものがあるのだろう?
望遠鏡の鏡筒の先端はこの憎い窓枠につっかえてしまったのである。
我々は金星を見失ってしまったのだ。すでに太陽は昇っている。
私は様々な努力をした。しかし、金星は発見されなかった。

6時56分、井上氏が望遠鏡の後ろにまわり、影にかくれて空を見るという方法を発見。この「井上式」により再び金星は見いだされた。しかし、問題はまだ解決していないのだ。鏡筒の先端はもう窓枠のそばまで来ているのだ。
7時4分、井上氏考案「たたみ平行移動作戦」が展開されていた。
この作戦は極めて複雑かつ困難な物である。だが、我々は鏡筒を完全に平行移動することに成功することができた。
7時50分、私の目はもはや限界であった。「井上方式」を用いたが無理であった。
だが井上氏は見出しに成功した。だが、我々は極度に疲労し、眠気が我々を襲ってきた。
その瞬間、我々の様子は一変した。これこそ「天研的」といえよう。
もう金星など何でもいい!我々は寝る場所のとりあいを始めたのであった。

記録!:7時53分30秒


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