デジタル一眼レフ比較 miniCANP2004 in西播磨


miniCANP2004は晴天に恵まれ、オリオン座がほとんど瞬かず、張り付くような好シーイング、冬の天の川も良く見える絶好の透明度という、
素晴らしい星空の下、撮影を行うことができました。

さて、せっかく、みんなで集まるのだから・・・ということで、デジタル一眼レフをお持ちの方々に、同一条件で撮影して貰い、その結果を比較してみるという撮像実験を行っていただきました。
望遠鏡は、3台集まっていたε160を貸していただき、各社デジタル一眼レフでの撮影を行いました。
その結果の一つをここに掲載しますので、ご参考ください。

絶好の星空の下、自分の撮影を中断して、快く、ε160を貸していただいた3人の方、デジカメ実験に時間を割いてくださったみなさんに、感謝いたします。
各画像の調整がまちまちなのはご容赦ください。現像処理が入ることもあり、統一化は無理でした。
ノイズレベルと赤の写り等をご参考にしていただければ幸いです。

■共通条件
・望遠鏡 タカハシε160
・CCD-RAWにて保存
・露出時間3分 コンポジットなしの1枚画像
・現像 EOS20Dを除き、ステライメージ4による現像
・画像、任意の800×600ドットをトリミング


Nikon D100
Nikon D100 ノイズリダクションON

発売は2002年6月。フジのFinePixS2Pro、CANON D60と共に一眼レフデジカメ天体写真の普及に一役かった機種です。
現状を考えると、本格的なデジカメ天体写真の幕開けから、まだ2年位しかたっていないことには驚きを禁じ得ない。
当時の機種の中で、唯一ノイズリダクション機能を備えており、撮像時にダークフレームを引くことが出来ます。
しかし、残念なことに、CCDの発熱対策が不十分な様で、ノイズリダクションONで撮影してもらったこの画像からは、
ダークの引き過ぎと思われる穴が多数みられ、そのノイズが画像の滑らかさを大きく損ねているようです。

PENTAX istD*

PENTAX *istD

ペンタックス初のデジタル一眼レフカメラです。
画像左上にはアンプに起因するノイズが見られます(下参照)。
今回比較した機種の中ではノイズは多い方で、原色の輝点ノイズが多数散見されます。
彩度は低め、Hα線の写りは、デジカメの一般的な写りと感じます。
*istDとD100は同じCCDが使われていますが、出来上がる画質としてはずいぶん、印象が違いますね。

残念ながら、*istDSでもこのアンプノイズは健在の様です。

Fuji FinePixS2Pro

Fuji FinePixS2Pro

デジタル一眼レフによる天体写真の火付け役。
開口率の高いスーパーCCDハニカムVを使っていることと、独自のノイズリダクション機能を備えることで、
長時間露光時のノイズを抑え込み、天体写真に実用化できるだけのポテンシャルを持っています。
こうして改めて比較してみると、そのローノイズ特性は特筆すべきものがあります。

この作品は、よーく画像を見ると、背景の空に、ぼかしが入ってノイズが均されているのが判ると思います。
彩度は低め、青感度の高さはこの星雲の写りからも判るかと思います。
赤感度は*istDと比べても良い印象ですが、この機体は、赤が写る機体だそうです。

Canon EOS KissDigital

EOS KissDigital

昨今の一眼レフデジカメ天体写真ブームは、この機種のおかげといっても過言はないでしょう。
その非常に安価な価格設定も魅力ですが、さらにこのカメラを魅力にしているのは、天体写真が非常に良く写るという点で、
作例を見ても、青色のガスの流れが美しく描写されていることはもちろん、Hα線への感度も他機種より高いようで、良く写っています。
ノイズレベルは上のS2PROと同じ位の印象ですが、こちらは変なぼかしが入っておらず、両者の背景を見比べれば、
その違いは一目瞭然でしょう。
ダークノイズは極若干、散見されますが、この程度であれば、充分実用に足ります。

Canon EOS KissDigital Kai

Canon EOS KissDigital Kai

赤外カットフィルタを外しさえすれば、デジカメであっても赤い星雲が良く写ることは前々から知られていました。
しかし、実際に、外すことは至難の技で極一部の自作例があるのみでした。
EOS KissDigitalは、赤外カットフィルタが簡単に外れる構造になっているため、望遠鏡販売店で加工され、販売され、
改造デジカメによる天体写真を一気に普及させたのでした。
これにより、デジタル一眼天体写真にとって、死角となっていた、赤い散光星雲に対しても威力を発揮するようになり、
画素数を始め、冷却CCDカメラよりもいくつかの点で上回る点が出てきました。

さて、ノイズレベルはもちろん、標準品と変わる訳ではありませんが、赤の写りは劇的といっていい程差があります。
星雲自体、飽和している部分もあり、全体的に感度があがったと捉えることもできます。が、少々穿った味方をすれば、
赤外カットフィルタを外して赤バンドを広げた影響で、色バランスが崩れ、カラー化の演算が狂い白トビしやすくなった
とも感じます。
しかし、いずれにしても天体は淡いものが多いわけで、メリットの方が大きい。
心配されている偽色ですが、演算が入るせいか、ローパスフィルタなしでも、出てこないようです。

Canon EOS20D

Canon EOS20D

2004年現在、Canonのデジカメラインナップで最新機種となっているのが、このEOS20Dです。
特筆すべきは、ノイズの圧倒的な少なさでしょう。
EOS Kissデジタルも充分にローノイズでしたが、20Dではさらにその上を行きます。
ノイズレベルが低くなったため、星雲のより淡い部分が写ってきていることもお解りになるでしょう。
さすがに、EOSKissDigitalをすでにお持ちの方に、買い換えを勧めるわけではありませんが、もし、これからデジカメを買う!
というのであれば、金銭的に多少の無理が効くのであれば、こちらの方が絶対に良いでしょう。


StarLightExpress SXV-25M

StarLightExpress SXV-25M ダーク減算なし

一眼レフカメラではなく、カラー冷却CCDカメラですが、D100と*istDと同じCCD素子を使っている為、比較参考のために、
ここに掲げます。
なお、冷却CCDカメラの場合γ=1となるため、単純なレベル補正では他のデジタル一眼と比べ、ハイライトは飛びやすく、
そのままでは淡い部分が上手く出せません。
そこで、γ=0.45に近くなる様なトーンカーブ補正を描いて行っています。

さて、冷却の効果に関しては、D100やistD*の画像と比較してみていただければ一目瞭然です。
圧倒的にローノイズなのは、CCDを冷却した効果です。
とはいえ、非冷却のEOS20Dが肉薄している点も注目に値します。

赤外カットフィルタを内蔵しないため、赤の写りは申し分ありません。
青い星雲とのバランスが悪いのは処理のせいだと思います。また、淡い部分の写りが今一歩なのもトーンカーブ補正を適当に
行っているためで、他の冷却CCDカメラ同様、デジタル現像を始めとする強力な処理を行うともっとずっと明瞭に描写できること
は付け加えておきます。
デジタル一眼風にトーンをかけたらこんな感じになってしまったと捉えていただければ幸いです。
下は冷却CCD風に簡単に処理してみたものです。
小さい画像ですが、ダーク減算不要というのがうなずけるほど、ローノイズです。
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