フィルタによる写り方の違い


冷却CCDカメラはモノクロの機種の場合、赤・緑・青色の3枚のフィルタを用いてそれぞれ撮影し、初めてカラー画像を得ることができます。
逆にいえば、狙う対象によって、カラーフィルムを変えるように、フィルタを用途によって変えてあげることで、模様を強調したり色彩を変えることができます。
しかも、冷却CCDカメラの高感度のおかげで、いろいろな特色のあるフィルタが使えますから、カラーフィルムの銘柄を変えるのとはひと味違う、ダイナミックな変化を楽しむこともできます。 以下、かに星雲を例にとって、みていきましょう。



   MT-160 CV-04L L=5分×4

まずは、ノーフィルタの画像です。
かに星雲は、なかなか複雑な光で輝いていて、通常の惑星状星雲が放つ、酸素や窒素など原子特有の輝線スペクトルだけではなく、通常の恒星と同じ連続スペクトルも強く放っています。 そのため、ノーフィルタでの撮影では、かに星雲の特徴ともいうべきフィラメントは、影をひそめてしまいます。



   R200SS CV-04L R=5分×2 G=5分×2 B=10分×2

こちらは純粋にRGB三色分解合成した画像です。
フィルタはTTL社製のRGB原色干渉フィルタ+EDMOND社製の赤外カットフィルタです。
赤外光をカットした上にRGB各フィルタで、連続光の強度が抑えられるために、輝線で輝いている赤いフィラメントの構造が浮き上がってきます。



   R200SS CV-04L R64=5分×2 OV=10分×9 B=5分×2

こちらは、OVフィルタを使ってみました。 RにはR64+赤外カットを使い、通常の三色分解用のRよりも透過幅を狭めて、輝線をより強調すようにしています。
Bは当初、Hβフィルタを使いましたが、Hβ特有の構造というものは見られなかったため、通常の三色分解用の青色フィルタです。
Gに割り当てたOVは国際光器扱いのTOI社製の眼視用のものですが、三色分解用のBフィルタと併用することによって、OVのみを通すようにしてあります。フィラメントの構造が、RGB純三色分解のとき以上にくっきりしていることにも注目してください。
ただ、10分露光を9枚重ねましたが、まだ露出不足でした。
面白いのは、通常みかけるかに星雲の写真のさらに外側にまで淡い星雲が写っていたことです。
また、フィラメントもHαを示す赤色ではなく、酸素輝線(OV)の緑色が強いようです。
考えてみれば、超新星爆発を起こす前の末期の星の内部では核融合反応が進み、水素よりも酸素や硫黄などの重い元素が多くなっているということなのでしょう。

このようにフィルタを用いることによって、ノーフィルタでは埋もれていた情報を引き出すことができるようになります。
惑星写真と同様に、フィルタリングは非常に重要です。
特にOVのような単色光フィルタである特定の元素の光を強調するというのは、原子の分布を知ることができるだけではなく、いままで誰も写していないような構造や模様を写し出すことができて、観賞写真としてもなかなかに面白い領域ではないかと思います。


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