CCDカメラの話題 いくつか
■CCDチップが同じなら、性能は同じ?
天体用の冷却CCDカメラが登場した初期の頃に、ある雑誌に、CCDチップが同じであれば、性能はどれも一緒・・・・
というような記述があった。
本当にそうでしょうか?
実際にそうではないことは、同じCCD素子の異なるカメラを使ったことがある人には判るでしょう。
が、しかし、現実的にはそういう方は稀少かと思いますので、その情報の一端として、今、もっともホットな、Kodak製35mmフルサイズCCD素子のバイアスフレームをお見せしましょう。
上は、天体用として人気があるS社製のカメラのバイアスフレームです。
バイアスフレームとはカメラの読み出しノイズを見るための短時間露光の画像(露出0秒で取得できる機種もある)です。
下は、最近、人気のF社製の同じ素子を採用した機種のカメラです。
S社製のものは、明らかに背景輝度に傾きを持っており、またなぜか縦スジが多数走り、気持ちの良いものではありません。
F社製はかなりしっかりとした造りで、産業用CCDカメラとしてのテイストを感じます。
CCDチャンバといい、造りからしてS社と一線を画していますが、画質面(これはそのままメーカの力といって良いでしょう)
でも差が現れます。
これはバイアスでの比較ですが、CCDカメラのS/Nに確実に効いてきますので、
非常に淡い星雲やHαフィルタなどのナローバンドフィルタなどで、低輝度の被写体などでは案外大きな差となってしまうかもしれません。
■ハイエンド天体用CCDチップの決定版!
天体用CCDカメラに要求されるCCDチップとしては、
1.高感度
2.高画素
3.広面積
4.ABG付き
などの特徴を要求としています。
ここ5年ほどは、
・高感度・高画素であるがNABG (Kodak製KAFシリーズCCD KAF3200MEなど ST10XMEやST8XME)
・低感度だが、高画素・広面積でABG付き(Kodak系KAIシリーズCCD KAI-4020Mなど BJ-42L、STL-11000M)
などのどちらかを選択せざるを得ませんでした。
唯一、広面積を諦めれば、SONY製ICX285AL搭載機(BJ-41Lや、SXV-H9)が、
高感度・そこそこ高画素(1.4Mpixel)・ABG付きと、チップの大きさ以外は理想的なCCDでした。
価格的にもそう高価ではないこともあり、現在でも、お勧めのCCDであることには変わり有りませんが、
その話しはまた今度。
さて、Kodak製KAF系CCDはフルフレームトランスファタイプで、非常に感度が高いという特徴があるものの、
ABGタイプは、開口率が70%になり、その上、量子効率ががた落ち。実質的にNABGの半分しか感度がないという欠点がありました。(5年前はこの件もあまり知られていませんでしたが)
ところが、今回、リリースされた、KAF16803は、ABG付きながら、量子効率60%もの高感度を実現しています!
しかも、恐らく類似CCDから、赤感度が高いことが想像されます。
チップサイズは38.6mm×38.6mm、画素サイズは4k×4kの16.8Mpixel。
センサについての詳細は、
http://www.kodak.com/US/en/dpq/site/SENSORS/name/KAF-16803_product/show/KAF-16803_productSpecifications
をご参考ください。
間違いなくハイエンド機になりますが、FLI代理店にお聞きしたところ、さしあたり、200万円は大きく下回る価格になりそうです。
もし、ハイエンド冷却CCDカメラを新調されることを考えている方は、ちょっと待った方がいいかもしれません。
画素数・CCDサイズ・感度・面積・ABG付き・・・いずれも現行のKAI-11002M搭載機よりも(特に感度面で)大きく上回っています。
STL-11Kをお使いの方からも、感度、とりわけHα感度については複数の方から不満を耳にしていますので、このCCDチップの登場はまさに福音といえそうです。
■ST2kはST8Eと比べてローノイズ?
ある方から、ST2Kの方がST8Eに比べてローノイズという話しを聞きました。
この意見はもっともな気がしますし、だいぶ浸透しているかもしれません。
自分も、ST2Kの方がローノイズかもしれない・・・と思ったものの、ひっかかるところがあったのも確かです。
実際に調べてみると、そうではないことが判りました。
CCDのスペックを見てみると、
KAF1603ME | KAI-2020M | |
Readout Noise |
15 electrons |
40 MHz - 20 electrons 20 MHz - 16 electrons |
Dark Current |
<10pA/cm2 @ 25° C |
<0.5 nA/cm2 |
Dynamic Range |
74 dB |
40 MHz - 60 dB 20 MHz - 68 dB |
Maximum Data Rate |
10 MHz |
40 MHz |
と、簡単にデータを並べてみると、
読み出しノイズも、ダークノイズもKAF1603MEが小さいことが判ります。
ダイナミックレンジもKAF1603MEが上です。
もともと、KAI系CCDは高速読み出しを得意とする素子であって、あまり天体向きな素子ではありません。
主な用途は、FA用途でしょう。
然し、その多画素と量産効果故の低価格で、天体用冷却CCDカメラにも流用されています。
純粋な画質面では、低速読み出し・高画質がウリのKAF系に劣るのは仕方がありません。
とはいえ、より多画素であるKAI-11000Mなどでは、プリント面でも有利ですし、コストパフォーマンスに富んでいます。
KAI系CCDの存在は天文用途でも無視できないでしょう(天文台では効率が悪いので使われないでしょうけど)
では、なぜ、ST2000はローノイズと言われているのでしょうか。
理由の一つとして、CCDカメラ比較の難しさがあります。
単に、1枚画像を単純に比較して、輝度カウントを比較するだけでは、残念ながら比較になりませんし、
単純に見た目だけではもちろん、写真として完成した画像での比較でもダメです(作者の腕の差も出ますしねー)。
異なるCCDカメラを評価するには、変換係数(ADU)なども考慮した比較が必要になりますが、
シュミでやってるわけですしねー・・・。そこまで必要かどうかは疑問もあります。
以下は、恐らくずいぶんと前に知人から頂いた画像だと思いますが、そういった点も考慮して、比較しやすいように、されてます(流石です)。
この画像では、単純にレンジの幅が狭いのに白いテンテンが少ないのでKAFがローノイズと思ってくれても良いです。
数字の高さについては、カメラなどのゲインを揃えた為、高めになっていると理解してください。
この場合、重要なのは、画像の輝度のばらつきであって、カウントが高い=ノイズが大きい とは言い切れないのです。
この場合、比較に必要なのは、Rangeの幅(つまり、白いテンテンとベースレベルとのバラツキですね)です・・・たぶん(をい ^^;)
ま、まあ、自分でもいずれ比較・検討してみたいと思います σ(^^;
もちろん、同型機であれば、そのまんま見た目の数字で比べてOKです。