町中と山と・・


撮影の利便性から、自分の場合、どうしても自宅撮像が多くなります。
冷却CCDカメラの場合、光害に強いと昔から言われていますが、実際にはどうなのでしょうか。

山と家での撮影を比べてみたものです。
山の方は愛知県東栄町のスターフォレスト御園での撮影です。最高の観測地という程ではありませんが、冬の天の川も良く見える環境です。
対して自宅の方は浜松市から10km程のところで、4等星程度がやっとの空で、一般的な都市部の空でしょう。
どちらの画像が山の画像かは判りますよね?

厳密な比較ではなく、あくまでもニュアンスとして、差を見たもので、
実際には、
@御園 イプシロン200 10分×7枚 ARコート付き窓ガラス、マルチコート付きクリアフィルタ
A家  MT160+レデューサ 5分×11 窓ガラス、クリアフィルタ ノンコート

かなりいろいろな要素まで出してみると、光学系や露出時間をはじめ、家の方が不利なデータにはなっています。

もっとも、厳密に比較する事自体あまり意味がありません。
自宅の方が光害の影響があるのだから、条件が悪いのは明白なわけです。
必要なのは、露出時間がかかったとしても、自宅でも山と同等の成果を上げることができるかどうか、その点に尽きます。

上記画像を見ると、山でも町中でも、ぱっと見、差がないように感じます。
しかし良く見ると、背景の空の荒れ具合が町中では顕著です。
このちょっとの差をどう考えるか、ですが、
この差はなかなか埋められない様にも思えるし、露出時間をはじめ、F値など、自宅撮像の方が不利な点を考えると、
案外簡単に埋まる様にも思えてきます。
少なくとも、今の自宅よりも少しでも空が良好なところに赴けば、この程度の差は無くなるとこれまでの自分の経験から判断できます。
つまり、ちょっとした郊外と山奥の撮影の差は出にくいかもしれない・・。
これは冷却CCDカメラの大きなメリットといえます。

そうはいっても空の差が顕著に出る天体もあります。
それは、反射星雲です。こればっかりは高度が高く、空の透明度の良いところに大きな分があることを実感しています。
彗星のイオンテイルも同様でしょう。
これは、町中ではスモッグ等で短波長側の光が拡散されやすく、淡い星雲が非常に写りにくくなってしまうからだと思います。

また、L画像では差がほとんど感じられませんが、RGB画像では、どうでしょうか。

RGB画像での比較もしてみました。
これだと露出時間もほとんど差はなく、

自宅 MT160+レデューサ F4.8
   IDAS TypeU R=5分×3 G=5分×3 B=10分×4

御園 イプシロン200 F4
   SBIG LRGB RGB=各5分×4

です。フィルターは違いますが・・。
B画像は自宅では10分連続露光でも辛いです。
差は歴然ですね。

これは、青い反射星雲のL画像についてもほとんどこれと同じくらいの差があります。
逆説的に捉えれれば、系外銀河の場合、L画像の場合に光害耐性が非常に向上することも判るかと思います。

色の差は、各メーカのフィルターの特性が出たって感じです。SBIGは銀河に向いていますね。
黄色のバルジと青色のハロが良く分離します。
反対にIDAS製は派手さはありませんが(これでも派手に処置してますが)、自然な色合いが魅力的です。

とっと、話しが逸れましたが、
なぜ、L画像で耐光害性が向上するのでしょうか。
それは、光害の主成分、つまり、街明かりですが、それは主に水銀灯とナトリウム灯からなることにあります。

上図は、LPS-P1光害カットフィルターの分光特性グラフですが、これには、光害の主成分の水銀(Hg)とナトリウム(Na)の光も記載されています。
見ての通り光害の主成分は、ある特定の光で発している輝線であることが判ります。
これを効果的に除去している優れたフィルターがLPS-P1というわけで、その様子がこのグラフからもよく判ります。

しかし、このフィルターを使用していないにも関わらず、なぜ、L画像では、お山と光害地と画質の差が少ないのでしょうか。
それは、光害源が輝線であるからに他なりません。
つまり光害源はあくまでも特定の光で光っています。
対して系外銀河は、連続光・・・つまり、可視光〜近赤外まで幅広い光でほぼ同じ強さで光っています。
その為、L画像で、幅広い範囲を透過させた場合、光害の影響というのは相対的に少なくなります。
ましてや、自分の場合、L画像は近赤外領域まで透過させていてCCDの持つ感度を最大限に有効活用しています。
あたりまえですが、光害源は人間の目では見えない近赤外ではほとんど光っていません(ってか、目で見えないトコで強く光っても無意味でしょ)、
系外銀河はもちろん、近赤外でも光っていますので、相対的にさらに光害の影響を小さくできます。
RGB画像では反対に透過波長幅が狭く、とりわけGフィルターでは、光害成分を盛大に拾い、銀河の光に対して光害の強度が強く、S/Nが悪化してしまいます。
その為、本来なら、LPS-P1の様な優れた光害カットフィルタを使用して、RGB画像を取得することで、さらに良好な画像を町中で得られる可能性があります。
L画像に関して言えば、赤い散光星雲に関しては光害カットフィルターが大きな成果を上げることができますが、
残念なことにこの種の新式の優秀な光害カットフィルターの多くは、赤外光をほとんどカットしていまいます。
この点は、町中での系外銀河撮像に関してマイナス面が強く、露光時間が延びるだけの結果になってしまい、旨味が余りありません。
RGB画像では効果は大きいことが容易に想像できますが(実わ、自分、未だにLPSは持ってないので、、、あくまで想像です ^^;)、
RGB画像はLRGB合成処理のマジックというか、極意で、ある程度荒れた画像であっても美しく色を載せることができます。
特にLRGB法が適している系外銀河ならなおさらです。
最後に自宅撮影の荒れたRGB画像を用いてLRGB合成を行った画像を示しましょう。
RGB画像の画質がこの程度あれば、LRGB合成後の画像へS/Nの悪影響はほとんど見られないことが判るでしょう。

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