Waveletと画像復元


現在の惑星撮像に於いて、WebカメラとRegistaxによる画像処理が全盛となっています。
Waveletとは何かというと、今年のCANPで講演してくださった方がいてとても良く判りました。

Waveletとは、各周波数成分ごとにわける操作のことをさしており、つまり、大まかな模様、細かい模様、その中間の模様・・・といった具合にそれぞれ模様の大きさごとにわけることを言います。
そしれ、それぞれのわけた模様に異なる強度のアンシャープマスクをかけるのが、RegistaxのWavelet変換というわけです。(余談ながら、周波数ごとに圧縮率を変えて画像を圧縮するのがJPEG2000のWavelet圧縮ですね)

逆にいうとその点を理解していないと、上手く処理したつもりでも、実は細かい模様が抽出できなかったりします。
例えば、下は自分が昨年(2006年)に撮影した木星ですが、実に良くその傾向が判ります。

スタック後のOriginal画像 Wavelet変換
画像復元 画像復元2回

Wavelet変換を行った写真は、当時、上手く処理したつもりでいたものです。
左下の画像は、改めて、画像復元処理を行ったものですが、比較してみたら、一目瞭然ではないでしょうか。
Waveletでは、周波数成分が低い(模様の構造が大きいところ)部分は上手く表現していますが、その模様の中の細かい微細構造は、まったく潰れています。
これは、周波数成分が高い(つまり、細かい模様です)部分は、あまり強調していなかった為で、改めて比較してみると、不自然極まりないですね。
もちろん、これは稚拙な自分の処理の結果であって、上手く処理できる人は、Wavelet変換でも、きちんと処理することと思います。

画像復元処理は、パラメータ出しこそ難しいですが、上手く復元できると非常に劇的に画像が改善されます。
天文ガイドで紹介されていた岡野邦彦さんの記事に倣って、PSFを変えてさらにもう一度復元処理を行ってみたのが右下です。
疑似輪郭などが出てしまっていますが、さらに模様が明瞭になりました。
2回行うことを前提として、処理の強度(具体的には回数です)とPSFを変えて前処理とすれば、画像復元1回よりよりよい結果を得ることができそうです。

Original 画像復元

画像復元の特徴として、元画が階調豊富でノイズが少ない画像ほど、劇的に画像が改善するという特徴を持っています。
従って、月面などでは驚くほどの画像改善が期待できます。

実を言えば、上の木星は、実はASC-11の直焦点撮影によるものですが、無理に強拡大した画像よりも、復元処理の結果、模様がより明瞭にはっきりと描写できていたりします。

で、突然、ショボイ画像出して、惑星・月について書いたのは、ネタ切れ・・・ではなくって、
画像復元処理は、星野撮影でも使えますので、その為の基礎を修得する為です(いや、ホント、マジで。信じて ^^;)

ステライメージでデジタル現像 画像復元

ASC-11によるかに星雲です。
復元処理によって、構造がより明瞭になったのが判ると思います。

画像復元処理は、Deconvolutionといい、バイオ分野では、光学系の性能を越える唯一の手段として着目されています。
また、当初のハッブルテレスコープは、球面収差でピンぼけ同然だったにも関わらず、それでも見事な映像を我々に見せてくれたのは、画像復元処理に依る結果です。

つまり、これは言い換えれば、シンチレーションが悪く、また海外ほど大口径を使っていない我々にとって、画像復元処理は、それを補うことができる可能性を秘めた唯一の処理法と言い換える事ができます。

使いこなすのは難しい処理ではありますが、なんとかマスターしたい画像処理法の一つです。

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