星を綺麗に表現する画像処理

■はじめに

冷却CCDカメラの撮影・画像処理にもだいぶ慣れてきましたが、明るい散光星雲を撮影した時に、どうもいまひとつ写真によるものと比べて違和感がありました。
それでも、自分では満足していたのですが、いろいろな人に画像を見ていただいたところ、やはり不評でした。
改めて、自分で処理した冷却CCDカメラの画像を見てみると、おもに以下の点がまずいと気づきました。

○星の色彩が乏しい
○星の輝きが足りない。地味である
○微光星が星雲色に染まっている
○星がにじんで星雲の色に染み出ている。

これらをなんとか軽減すべく、画像処理を試行錯誤してみました。

■星の色を強調する  

冷却CCDカメラの画像の場合、星雲はともかく恒星の色調がいまひとつ失われている傾向があるように思います。
これは自分の画像だけではなく、インターネットや雑誌の入選作でもその傾向が見られます。
冷却CCDカメラで色彩を強調する手段は、なんといっても一番強力なのは、色彩強調付きのデジタル現像処理です。
自分の作例からいえば、系外銀河などを撮像した画像には、この処理を適用し、恒星も美しい色彩が表現されていることに気づいていました。
しかし、この処理は、あまりにも強力すぎて、もともと色味の強い散光星雲の画像に適用した場合、あからさまに不自然な絵になってしまいます。
m17cedd.jpg m17dd.jpg
左:色彩強調付きデジタル現像(RGB/BSR型) ,右:デジタル現像(RGB/RGB型)

しかし、色彩強調をかけたものの方は恒星の色が明瞭になっていることに注目してください。
とはいえ、このままLRGB合成をしたとしても、不自然な画像になることは明らかです。なんとか、星の色を残したまま、星雲を自然な階調にすることができないものかと考えました。
答えは意外と簡単でした。
左の画像と右の画像をコンポジット−加算平均すると恒星の色は保ったまま、星雲は自然な階調になるではないですか。

m17cc.jpg

これなら、LRGB合成しても星の色がなくなるというようなことはなさそうです。
場合によって、コンポジット−加重平均を使って合成する割合を変えてあげれば良さそうです。
でも実わ、わざわざこんなことしなくてもLab色調補正でR=G=B=Y=1.4くらいにしてあげればそれでいいかもしれません。


下記のスターエンハンス処理を加えた最終画像。
ちょっと透明感に欠ける気がします。トーンカーブもまだ改良の余地があるのかもしれません。

■星の輝きを増す −スターエンハンス処理−

さて、色彩の問題が片づいたら、次は星の輝きです。
デジタル現像した画像に、LRGB合成処理をしただけの画像はとりわけ星が地味なことが多いです。
レベル補正・トーンカーブ調整で明るめの星は輝くように見せることはできるものの、微光星は地味なままです。
また、LRGB法の欠点として、星雲内の微光星は星雲色に染まってしまうというのがあります。これもなんとか解決したい問題です。
M16dd.jpg
アンシャープマスクを用いれば、星の輝度レベルがあがり、星が明るく輝くなることは前から気づいていた。
しかし、アンシャープマスクを強くかければ、S/Nが悪化し肝心の星雲が荒れてしまう。
と、いって弱めにかけるのであればあまり効果はありません。
なにかいい方法はないものかと、いろいろと試行錯誤した結果、良い方法を見つけることができました。
それが今回、紹介するスターエンハンス処理であります。

LRGB合成が終わったところから処理を始めます。
まず最初に、画像−複製で画像の複製を作成します
やはりアンシャープマスクを利用しない手はないので、これを利用します。 複製した画像に、アンシャープマスク 適用範囲 大 強度2 をかけます。 ようするにギンギンにかけるわけです。


この画像は比較的S/Nが良い画像ですが、やはり星雲やバックが荒れてきます。おまけに明るい星の周りにはアンシャープマスク特有の黒い縁取りができてしまっています。しかし、微光星が明るくなっていることに注目してください。
星雲や背景は荒らさずに、しかも恒星の黒い縁取りも出ないようにしてかつ、微光星のみを強調したいわけですが、今回もコンポジットを応用します
と、いっても複製前の画像とアンシャープマスクをかけた画像を加算平均するだけではアンシャープマスクを弱くかけることとなんら違いはありませんし、効果もさほど期待できません。
ではどうするのかというと、
合成−コンポジット 合成方法:明るい方を用いて合成します。
このコマンドは両方の画像を比較して、輝度の高い方を使って画像を再構築してくれます。
つまり、

微光星 − USMで明るくなっている⇒そのまま
恒星の周りの黒縁 − 元画像よりも暗い⇒元画像で置き換え
星雲・背景の荒れ − 荒れが目立つのは、明るい部分と暗い部分の差が大きくなるから。暗い部分は元画像に置き換えられるので、荒れはさほど目立たない。実際にはバックグラウンドはUSMのしきい値であまり荒れないようにする

という具合で、実に都合の良いコマンドがStella Imageには用意されていました。
実際の作例を見ますと、
スターエンハンス処理済みのM16

ごらんの様に微光星が強調され、作品自体の印象も違ってくるのがおわかりになるかと思います。
微光星の多いエリア、星がたくさん写り込む大面積CCDカメラ、系外銀河中の星を目立たせたい時などに使うと良いと思います。
ぜひ、お試し下さい。

inserted by FC2 system