シュワルツ150Sを使う その弐 単体撮影編


さて、Chromacorでの撮影は、とりあえず一段落として、では、Chromacorなしでの撮影ではどうでしょう?
アクロマートで撮影?無理無理・・・
と、思うかもしれませんが、果たして、結果は・・・?

その前に武器を用意します。
さすがに、何もない状態で、撮像を行えば、良い映像が得られないのは火を見るより明らかです。

で、用意したのが上のです。

フジのトリアセテートフィルタとヨドバシ新宿店で250円で購入した、短冊フィルター。寸法は小さいですが、冷却CCDカメラ用としては問題ない大きさです。250円で数十種類のフィルターのサンプル(?)が入っています。大まかなな特性グラフも付いて、安心して使えます。
これを光映舎のスライド式アダプタで使用するのですが、スライド枠を3mm厚アクリルで作成しています。
2枚張り合わせで6mmになるわけですが、真ん中の部分は張り合わせず、変わりに赤外カットフィルター(IDAS-L)を両面テープで貼り付けています。
そして、さらに、アセテートフィルターのフィルターカードを差し込むよう、両サイドは、カッターで溝を作り、ここに上のフィルターカードを差し込み、使用します。

通称、赤貧戦隊セキヒンジャー(笑)

■赤貧ブラック:コスモポリスフィルター 松本楽譜の吸収型光害カットフィルター。これで明るい夜空も真っ黒だ!
■赤貧ブルー:ROSCOのItarianBule。色素吸収型の青色フィルターではたいてい600nmから透明になっているものが多いのですが、こいつは問題ありません。OIII線も透過しますので、比較的使い物になりそうです。そうはいっても、透過率のピークは
60%程度なので、干渉フィルターが普及している現在、使う価値はあまりないのかも。
■赤貧イエロー:フジのトリアセテートのSC46。色収差対策フィルターです。戦隊モノのイエローって、デヴだったり、あからさまに脇役ですが、これこそ今回の主役です!
■赤貧グリーン:ROSCOのChromaGreenです。このフィルター、OIII線への透過率がなんと80%近くあり、IDAS製干渉フィルターの50%に比べ大きく透過率の面で上回ります。惑星状星雲の色彩でIDAS製フィルターでは紫系に発色することが多いのですが、IDAS-BとChromaGreenの組み合わせでは、もう少し緑色の発色を出すことができそうで、IDAS製をそのまま使う場合とはひと味違う発色が期待できます。
■赤貧ピンク:これもROSCOのフィルターでRosePinkです。このフィルターも特性が大変良く、IDAS製Type3とほぼ似通った効果を期待できるアセテートフィルターです。赤色の透過率は75%あり、これも非常に使えそうなフィルターです。
■赤貧レッド:フジのトリアセテート、SC64です。天文用として、ガラスフィルターのR64と共に、103aE以降アマチュア天体写真に多大な貢献をしてきたフィルターです。その天体に向いた優れた特性は、健在で、最新の一眼レフデジカメや冷却CCDカメラとの組み合わせでも効果をあげています。
しかし、Hα線への透過率は案外悪く、SC64,R64の分光グラフを調べてみたら80%程度しかなく驚きました。

下はおおまかにプロットしたグラフです。

ROSCO 吸収型フィルター 分光特性

SC46はグラフにプロットされていませんが、SC46の数字46は460nmの波長で、透過率が50 %となるという意味を持ちます。同様にSC64は640nmでの透過率が50%となることを意味しています。Hα線が656nmですから、確かにHα線を強調するにはもってこいのフィルターかもしれません。ただ前述の通り656nm付近ではまだ80%程度の透過率のようでした。

では、赤貧レッドと赤貧イエローを使って、シュワルツ150Sで撮影した結果をご覧いただきましょう。

SC46+IRC シュワルツ150S ST7ME 5分×7フレーム ※RGBはR200SS CV-04Lにて
SC64+IRC シュワルツ150S ST7ME 5分×7フレーム ※RGBはR200SS CV-04Lにて

さて、どうでしょう?
RGBの色信号こそ、過去にR200SSで撮影したものを流用して手抜きをしていますが、アクロマートレンズとは思えないようないい写りだとは思いませんか?
実のところ、冷却CCDカメラは色収差に非常に敏感ではありますが、画像処理法、とりわけLRGB法が確立しつつある現在、色収差をフィルターで抑え込んだL画像さえ、撮影できれば、アクロマートレンズであっても、良い映像を得ることができそうなのです。
むろん、シュワルツ150Sのように、実際に良く見えて、ある程度しっかりとした、扱い易い望遠鏡である必要はあります。

SC46ではまだ色収差が残るため、若干星がにじんだようになっているのですが、実わ、これがLRGB画像では良い方に働き、星々の色彩が非常に美しく描写されました。
また、微光星がシャープなのはやはりひとえに、シュワルツ150Sの光学性能が優れているからでしょう。

下のSC64による画像ではフィラメントの描写がよりいっそうはっきりとしてきていることにも注目してください。
こちらの方はアンシャープマスクを強めにかけて、フィラメントの描写に重きを置いて処理しているため、やや星が硬調で若干ギスギスした印象になってしまっています。
フィラメントの写りもですが、透過する波長幅が異なるため、SC46に比べSC64の方の微光星の写りが悪い(極限等級が落ちている)ことにも注目してください。
フィルターによって、これだけ写りに差がでるものなんです。
むろん、ノーフィルタでは、色収差のため、ぼけぼけの像しか得られないと思います。
アセテートフィルターで、うまく抑え込んでいる(カットしている)からこそ、しっかりとした映像が得られたのです。

欠点を把握し、その対策さえ、きっちり行えば、アクロマートレンズでも優れた撮影はできます。
なお、今回、実行はしませんでしたが、むろん、Hαフィルターのような単輝線フィルターであれば、色収差の影響は皆無となります。
今回のシュワルツ150Sのような明るく、しっかりとした望遠鏡にはもっとも適した撮影法となることでありましょう。
また、シュワルツ150Sにレデューサーは用意はされていませんが、ケンコークローズアップACを用いて、良い結果を得ることもできるようです。(ただし、ST7Eと同程度の大きさのCCDでの話です)

NGC672 シュワルツ150S+SC46+ST7ME 5分×5枚
若干明るい星にニジミがみられますが・・・微光星は非常にシャープ!
反射系に比べ、コントラストが高く、実効F値も明るい!?シュワルツは1面単層コートだとは思いましたが・・・露出時間の割に良く写っていると思います。MT+レデューサだとどうかなあ・・ここまで写らないような気も・。
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