シュワルツ150Sを使う


シュワルツ150Sを同じ同好会の岡本さんよりお借りすることができました。
この望遠鏡の魅力はなんといっても、口径15cm屈折望遠鏡!であることに尽きると思います。
なにしろ、20年前だと、口径15cm屈折望遠鏡といえば、町の天文台にしかないような、そういう望遠鏡だったわけです。
それが、現在、アマチュアでも所有でき、しかもその低価格設定にはやはり驚きを禁じ得ません。
しかも、シュワルツ150Sはアクロマートレンズを採用しながら、鋭いキレ味を持ち、眼視用として、優れた性能を発揮するという定評です。
確かに、眼視で実際に見てみると、火星の模様がコントラスト良く見え、土星のキレ味もMT160よりも一段上です。
まあ、その辺りに関しては、僕ごときが云うよりも、インターネットや各種雑誌での情報を参考にしてもらう方がよほど良いと思いますので、そちらを見て貰うとして、、、、
あ、ただ一言言わせて貰えば、よくこの種の望遠鏡を表現されるのに、うすい青色の色収差は気にならない・・と表現されることが多いが、これに関しては、僕には少々疑問です。
確かに、土星では気になりませんでしたが、明るい火星では、やっぱりうっとうしく感じました。
実際に、後述する、Chromacor色収差補正レンズ『ALIES』を使用してからは、付けない状態での火星観望は考えられなくなったことを記述しておきます。
また、ちょうど火星観望で、公共天文台のタカハシ20cmフローライト屈折を覗く機会がありました。
シーイング、アイピース、倍率の違いもありますから、一概には言えませんが、火星面模様のコントラストは、シュワルツが勝っていましたが、フローライトの持つ、色彩の豊かさ、圧倒的な透明感・・・
ALIESを使用してもなお、フローライトが持つ性能には及ばない面もあったことは記しておきます。
とはいえ、模様のコントラストでは勝っていましたから、やはり眼視性能を重視して、きちんと作られた望遠鏡は良く見える!という印象で、コストパフォーマンスが圧倒的に高い望遠鏡です。

シュワルツの外観は、金属鏡筒であるため、頑丈で強度に関してはいささかの不安も感じさせません。
ただし、高価な高性能アポ屈折とは異なり、高級感を感じるようなものではなく、その点にこだわる方には向いているものではないでしょう。
価格を考えれば当たり前の話です。
しかし、みかけはチープであっても、しっかりとした造りは価格相応以上のものですし、なによりその性能は一級品ですから、実際にガンガン使って観測・観望したい人には、充分、応えてくれる仕様です。
さすがに、重量はみかけよりもずっしり重たく感じ、観望用と割り切ってもGPクラスでは厳しいと思われます。
GP−Dクラスは必要となりそうな気がします(EM−10でちょっと苦しい感じですが・・)。

さて、ここではやはり、冷却CCDカメラでの性能を見てみます。
といっても、いかな良く見えてもアクロマートはアクロマート。
そのままでは冷却CCDカメラ用としては、面白くありません。
実をいえば、アクロマートレンズであっても、R,G,Bごとにフォーカスを合わせ撮影することで、美しい画像が撮影可能となるのですが、
今回は、天候が悪く、実行することができませんでした。
また、ナローバンドフィルターによる撮影では、アポクロマートだろうが、
アクロマートだろうが、色収差は完全に無視ができますから、問題がありません。
特にこのシュワルツ150Sは、F5と屈折望遠鏡としては、相当明るい部類に属します。
色収差さえ対処できれば、撮影にはうってつけのスペックなのです。

接眼部ですが、ラックピニオンで、恐らく、写真撮影をしている方の眼からみえれば、使えるシロモノではないでしょう。ロックネジを締めても、少し力を加えれば動いてしまいます。
ただし、この件については、もう1ヶ所、タップを切ってあるところがありますので、その部分に、ネジを付けてやれば解決しそうです。
そうしなくても、冷却CCDカメラに於いては、合焦はモニタリングしながら行えますし、1回あたりの露光時間はたかだか10分程度。僕が使った限りでは問題となることはありませんでした。
ラックピニオンも滑らかで充分実用に足るものだと思います。

さて、恐らく撮影派にとって、最も気になるのが左の写真のレンズ・・・
色収差補正レンズ、Chromacor ALIESの存在でしょう。
カタログスペック通りの効用があれば、15cmアクロマートが、一気にアポクロマートになってしまいます。
眼視での効果は、確認しましたが、果たして色収差にシビアーな冷却CCDカメラで使うことができるのかどうか、興味のあるところです。

M8 ST7ME R=1分×4,G=1分×3,B=1分×4
Blue FWHM=2.95 Green FWHM=1.91 Red(IDAS-Type3) FWHM=1.76

一見して・・ダメだこりゃ・・
あ、いやいやいや、見るべきところもありますので、ちょっとこの画像から考えてみましょう。

まず、所有者である、岡本さんからお借りするときに聞いた事は、
Chromacorとは、
・アクロマートでピンぼけにしている(だから青色ニジミは目立たないのである)青の焦点位置を、G,Rに一致させるレンズである。
・色収差を低減する代償として、非点収差は若干増大する。
・色収差は、EDアポ並に低減(F8に使用でフローライトアポ並、だそうである)
・効果を発揮する結像面位置は決まっているため、置く位置が大事

ということでした。
今回、結像距離は、お借りしたリング類で、ほぼ一致しているはず、、ですが、もしかしたら、若干、ずれていたのかもしれない可能性はあります。
つまり、Chromacorの性能を完全に発揮できていないのではないか、というのがまず1点。(逆にいえば、扱いにくいともいえますが)
次に、F5ではEDアポ並、とのこと。EDアポ・・冷却CCDカメラにとっては、ビミョーな位置づけですよね、EDアポ。
僕が所有していた100SDUFは口径比F4で、フローライトに近い特性を持つ第3世代のEDレンズを採用したSDアポクロマートでしたが、青感度が低かったCV-04L(KAF400L CCD)では、問題なく使用できていましたが、ST7E(KAF401E)になって、青ハロが明瞭に出てしまうようになり使い物にならなくなってきました。
今回は、さらに青感度が向上しているST7ME(KAF402ME)を使用していますから、EDアポ並では色収差を拾ってしまう可能性が充分に考えられます。ましてや、F5ですからね。F5のED望遠鏡としてはこんなものかな?とも思います。
さらに非点収差を増大させている、とのことなので、青画像では、ぼけた上で、斜めに流れているのでしょう。
赤画像でも星像が崩れていますが、これは、フィルターがIDASのTypeVであり、短波長側も透過するために起こってしまった現象です。
赤画像では星像自体はすこぶるシャープで、それは星雲の構造をみていただければ判る通りです。
MaxImDLで星像サイズ(半値幅=FWHM)を5カ所任意で見てみましたが、さすがに青画像は肥大してしまっていますが、夏場でシーイングが良かったためか?赤画像と緑画像でのFWHMは非常に良い結果を残しています。上に示した数値は5カ所平均値です。
750mmとすると、R200SSやMT160+レデューサーとほとんど同じ位の焦点距離となりますが、FWHM=1.76をたたき出した画像は数えるほどしかありません。
つまり、赤画像と緑画像に置いてのシャープネスは、特筆物といえましょう。
ナローバンドや、あるいはR64+赤外カットフィルターの組み合わせによる散光星雲の撮影では素晴らしい威力を発揮することでしょう。
なお、上記画像のフォーカスは、Type3-L(赤外カット)で行っています。


今回、性能を発揮できていない可能性は捨てきれないものの、Chromacorレンズは価格が高価なこともあり、残念ながら冷却CCD/一眼デジカメの撮影用としては、あまりお勧めできるものではない、というのが僕の結論です。
ただし、眼視用では必須とまでいいませんが、非常に魅力あるアイテムとかんじました。
また、シュワルツ自体は、ナローバンド撮影用、あるいはR64での散光星雲撮影用として非常に魅力的な望遠鏡であると実際に使ってみて思います。
また、通常でも短波長側さえ、カットすれば、良好な映像を得ることができそうです。
左は、SC46+IDASType3−Lで撮影したM20です。露出は、2分×19枚。
RGBは過去に撮影したものから適用しています。
Chromacorレンズは使っていますが、なくても同等の結果が得られるように思います。
短波長でのぼけはSC46で完全にカットされているようで、目立ってきません。
眼視用としては、色収差補正フィルタというものがありますが、撮影用としては、もっと安価でシンプルな特性のSC46で充分です。

なお、左画像では、途中で曇ったり、ガイドミスした画像にも、ガイドミスキャンセラーやバックグラウンドスムースなど、数々の処理を適用してしまったので、星像チェックには向きませんが、M8でみられた星像ぼけがないことは確認していただけると思います。

ToUcamで撮影した月面は、月アルバムのところにおいてありますので、そちらも見ていただければ幸いです。




 続きます。 


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