シュミットニュートン再び

Celestron R140SS Comet Catcher  D=140mm f.l=500mm F3.57 Schmidt Newton                   
1985年前後に販売されていた、セレストロン社のシュミットニュートン光学系を入手しました。
この光学系の良さ(と悪さ)は、5年ほど前に北村氏から、Meade社のものを借用した際に、良く知ることができました。
以来、この光学系に魅力を感じていました。

さて、昨年、引っ越したのを気に知人から、このセレストロンR140SS、通称コメットキャッチャーを譲って貰いました。
さて、その名前から判る通り(?)ハレー彗星フィーバー最中に販売された鏡筒で、Vixen取り扱いの製品です。
確か、高校生の頃にも旧いVixenのカタログを見ては、これ・・欲しいなぁ・・
とか思っちゃったりしてた、アコガレの鏡筒です。
・・当時ね。

魅力はなんといっても、その明るさで、
口径14cmF3.57と望遠鏡としては異例の明るさがあります。
スペックだけから想像すると、いかにも写真向けの鏡筒の様に感じますが、
実際には良像範囲が狭いのは、以前、借りた時に良く判っています。
そのままでは使い物にならないでしょう。

ところで、純シュミットカメラ化やフラットシュミットカメラ等、シュミットニュートン式をベースとすることで、より優れた光学系となることがすでに知られています。

と、いうわけで。
自分もR140SSを改造しよう考えました。
とはいえ、不器用なので、性能が出せるだけのものを作る自信はありません。
さしあたっては、とりあえずのものを試作し、性能が出せれば、次により良いものを作成することとしました。

まずは補正板をなるべく焦点距離から離れた位置に置くことで諸収差の改善を図ることとしました。
悩んだのが鏡筒の筒で、当初は、MIZELの13cm反射鏡筒を利用しようとしましたが、残念ながら鏡筒径が若干合わず、保留となりました。
何回か、あれこれ、試すこともありましたが、上手くいかず、結局、入手してから1年ほど経つ、2005.07にAD-VIXより安価な13cm反射望遠鏡鏡筒を買うことにしました。
この望遠鏡は使われている鏡筒バンドから、同径であることが容易に想像できました。
というわけで。
さしあたり、Vixen製R130Sをベースに試作することになったのでした。

試作したシュミットニュートンです。
R130Sの鏡筒に、R140SSの補正板と主鏡・斜鏡を組み込みました。
ほぼ筒の真ん中あたりに接眼部がきます。

シュミットニュートン改の作例です。

さて、シュミットニュートンは、F値が暗いシュミットカメラといえます。
補正板は焦点距離の2倍の位置に置くのが理想ですが、しかし、焦点位置から離すことでも性能向上が期待できます。
今回のR130S鏡筒への組み込みでは、焦点距離の1.4倍程度の位置に補正板を置くことになるのですが、もしかしたら、
ST8E相当の視野ならば、充分な性能を発揮する可能性はあるのではないか・・・と、期待して撮影したのが上の写真です。
ソフトウエアビニングで縮小しているため、判りにくいですが、若干、星像が崩れますが、元々のものに比べるとずっと性能が改善されていることは確認できました。
さしあたり、とりあえずの性能が出ていることが確認できましたので、さらなる改造を進めていきたいと思います。

現在、考えている強化開発プランは以下の2つです。
■シュミットニュートン強化開発プランT 純シュミット化 

筒を継ぎ足して、焦点距離の2倍の位置に補正板を持ってくる。


シュミットニュートンに採用されているエレメントは斜鏡こそあるものの、シュミットカメラそのものであります。
シュミットカメラでは補正板は、焦点距離の2倍の位置に置くのが通例です。
ところがシュミットニュートンでは、補正板はほぼ焦点位置に置かれています。
補正板では、球面収差を補正しているのですが、球面収差の補正に関しては、補正板はどこに置いても問題ないそうで、そのため、筒の長さを短くし、扱い易さを優先にされているのがこの光学系というわけです。
その分、性能はギセイになっています。

焦点の2倍の位置に補正板を置くことによって良像範囲がぐっと広がるので光軸には鈍感になるというメリットがあります(精度を出しにくい自作では非常に大事)
像面湾曲は残りますが、実のところ、シュミットの像面湾曲は、ニュートンと同程度です。
つまり、シュミットカメラではF1とかF2とか極端な明るさであるため、強烈な像面湾曲が発生し、
フィルムをカールさせる必要性がありますが、F値が暗い本機では、あまり問題になりません。

デメリットは筒が長くなるので取り回しが悪くなることと、加工が難しいこと。

■シュミットニュートン強化開発プランU フラットシュミット化 

補正レンズ(両凸アクロマート)で補正しつつF値を明るくする。


Tanaka氏が提唱したフラットシュミットニュートンタイプでは、補正板はシュミットカメラの正位置よりも主鏡近くに配置し、残存する収差は補正レンズによって補正するという光学系です。
補正板は、焦点位置の1.3倍〜1.5倍程度の位置に配置する方式は、R130Sベースの本機にとっては実に都合が良いです。
14cmF3.3〜3.4とさらに1段明るくなる上、プランTでは補正しきれない像面湾曲の補正が出来ます。
デメリットは、補正レンズを組み込もうとすると、ピントが出るかどうか・・という根本的な問題があります。
また、補正レンズをどう組み込むかも問題です。補正レンズの光軸が出てなければ性能への悪影響は大きいです。
接眼部はR130Sのものを流用しているのでさほど心配はしていませんが、完璧なスケアリングがとれているか?と、問われれば正直、自信がありません。
補正レンズに斜めに光線が入射すれば、さらに星像は悪化することでしょう・・。

(2005.12追記)
う〜ん、構造上、どうしても斜鏡が主鏡の真ん中に来ないことが判ったので、スライド式接眼部を廃し、
斜鏡セル周り、接眼部周りを変えなくてはどうにもならないようです。
AD-VIXやビクセン光学といったパーツを提供してくれるところもなくなってきており、当面、凍結です。

性能についてですが、周辺減光はやや大きめな感じですが、明るいF値の威力。写りは素晴らしいものがあります。
光軸不良の状態ながらも、なかなかに満足いく結果を得ることができていますので、
また、再度、接眼部周りを作り直して使えるものにしていきたいと思います。


それにしても、10cmクラスの反射って個人的には結構好きです。
C5とかもコンパクトでいいよねー。

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