SXV-H9を使う


機材が壊滅状態の中、K&Rさんのご好意で、SXV-H9を貸していただいています。
本当にありがとうございます。
ここでは、SXV-H9について書いてみたいと思います。

SXV-H9は、スターライトエクスプレス社の放つ製品です。
昨今では、SXV-M25CというAPSサイズ600万画素カラー冷却CCDカメラを使用した作品が、
天文雑誌のフォトコンテスト上で何回か登場していますのでご存じの方もいらっしゃると思います。
とはいえ、モノクロ140万画素CCDである、SXV-H9は余り知られていないかもしれません。

面白いのはスターライトの製品の特徴として、ローノイズのCCDを使っているので、温度管理はしない、ダーク減算は無しでいいじゃないか。
というのがあります。
これは、冷却CCDカメラは必ずダークライブラリを使って減算するもの・・・と考えている国内の天体用冷却CCDカメラユーザにとっては驚くべき内容です。
逆に言えば、それが国内でのこの製品の普及の妨げになっているかもしれません。

まずはその点を見てみましょう。

MT160 直焦点 L(IRC)フィルター 露出300秒 1枚画像 ダーク・フラット無し! RAW画像

上がその画像です。撮影は9/27撮影で、決して涼しいとすら言い難い中での撮影です。
さすがにその様な中では、ノイズは皆無とは言い難いですが、SBIG社製のCCDカメラに比べると実にローノイズです。
っていうか、SBIG製のはダーク減算しても、これ以上のノイズが残っているような・・σ(^^;

この程度のノイズは、SBIGをお使いの方はお解りでしょうね。ホットピクセル除去処理で簡単に除去できます。
無論、涼しくなってくれば、もっとノイズは減ることでしょう。
この時期でこの程度のノイズであれば、真夏での使用でも心配はないだろうと思います。


SXV-H9の特徴としては、
・なんといっても、高感度ExViewHAD CCD搭載機(Q.E Peak67%(マジ?) Hαで50%)であり、極めてローノイズで高い感度を実現しています。しかも、ABG付きです。
感度だけでいえば、ST7E(NABG)に匹敵しています。しかもこちらはブルーミングの心配が全くないABG仕様です。

・画素サイズが6.45μと高精細で、きめが細かく、高分解能が得られます。(反面、ガイドはキビシイです〜・・・)

・カメラが軽量で、望遠鏡にやさしいです。ST7Eの2/3以下でしょうか。とにかく軽い。

・USB2.0転送でほぼリアルタイムにフォーカス調整を行うことが可能であり、大変扱いやすいです。

・国内で同種のCCDを採用しているメーカ製と異なり、MaxImDLに対応しているため、操作性が良く、また、フィルタホィールや、ロボフォーカスの様なオートフォーカサーに対応しているのも大きなメリットです。

・冷却温度制御機能はありませんが、ダーク減算そのものが不要な本機では大きな問題ではないでしょう。
そもそも、ここまでローノイズであれば、ダーク減算は逆効果な可能性すらあり得ます。
かつて、CANで画像の除算・減算はS/Nを劣化させることが述べられ検証されています。

・・・ちと実験してみますか。幸いデータが揃ってるわけですしね。

左がダーク減算を行った画像、右が、ホットピクセル除去を行った画像です。画像はもちろん、同じものを使っています。
MT160で5分1枚のデータです。ダークは5分露光4枚を平均したものを使っています。
一見同じに見えますが・・・。

上を300%で拡大してみました。・・・余計判らなくなった様な気もしますが・・。
ビミョーですが、ダーク減算の方が、S/Nが悪い気がしませんか?
いずれにしても、このカメラでは、わざわざダークを取得するのは単なる徒労ということになりそうです。

他機種、例えば、ST7Eなどはダークノイズが多いので、同様の結果にはならないと思います。
ホットピクセル除去では限界がありますし、なにより、まずイメージングの基本として、何が画像を劣化させているか(見映えを悪くしているか)を見極め、どう処置するのがベストなのかを探る必要があります。
ダーク減算がS/Nを損ねるので不要の方が良い、というのは、本機の様に、非常に低ノイズであって初めて成り立つ話しです。

しかも、ダーク減算有無の画質の差については上の結果を見てもほとんど無いといえるわけですから、
ダークノイズが多い機種ならば、ダーク画像も多数枚コンポジットを行ってダーク減算することをお勧めします。


と、いうわけで。
いくつか撮影した写真をお見せします。完成画像、フルサイズです。

NGC891 MT160直焦点

画素サイズが細かいせいか、非常に解像度が良く写る。
このCCDチップでは、ビットラン製のものも含め、星像が非常にシャープに見えるのはなぜだろう・・・

IC59、IC63 FL-80S+レデューサ。

淡い被写体であるが、赤も青も良く写りそうです。死角のないカメラ・・そんな印象です。
画素数がもっとあれば、間違いなく万能機なのですが・・・。

光害地での撮影の為、この被写体としては、星雲の淡い部分の描写は良くありません。
やはり光害地で反射星雲は難しいです。

ペリカン星雲 FL-80S+レデューサ Hαフィルター

F5.6(実効ではもっと暗いと思う)という暗いレンズを使った割りには、案外写ってくれました。
高精細画素の為、高い分解能で写ってくれ、9μ画素のST7Customと比較した場合、明らかに描写が上で驚きました。
とはいえ、Hα単色などのナローバンド撮像に関して言えば、KAF系CCDを採用した、ST7Customの方が感度面、つまり写りでは、分があるかなとも感じます。
網状星雲 イプシロン200 Hαフィルター

高精細画素が活きて、網状の複雑な様子をみてとることができます。
素晴らしいカメラです。

いずれの画像もダーク減算は行っておりませんが、問題を感じることは全くありません。

このカメラで不満に感じていることも述べておきます。

1)カメラレンズを取り付けるのが容易ではない。
手持ちのリングではほとんどお手上げ状態です。タムロン328あたりと組ませると高い性能を発揮しそうですが・・。

2)TrueTech社製フィルタホィールと併用では、イプシロンでピントが来ない。
一緒にお借りしたTrueTech社製フィルタホィールは大変便利な優れものなのですが、
イプシロン200では、ピントが出ませんでした。
フィルタホィールは厚みが30mmくらい、あとはネジ込みリング部でかなり光路長を消費しています。
また、SXV自体もそれ単体でCCDまで17mmの光路長があり、結果的には一眼レフカメラのフランジバックよりも長くなってしまっていると思われます。
そのせいもあり、イプシロンや、MT160+レデューサでピントが出ませんでした。
もちろん、フィルタホィールの使用を諦め、単体での使用では全く問題ありません。
但し、カラー化を実現する方法が一切ありません。

以上の2点です。どちらも他社製冷却CCDカメラでは、国内サードパーティからスライド式フィルタアダプタや、カメラレンズアダプタで解決する問題ですが、今のところ、スターライト社製については出ておらず、難儀しそうです。

それ以外の点については、取扱易さ、そして何より、画質!
実に素晴らしいカメラだと感じます。



もう少し、テストしてみます。


2007.2追記

カメラレンズとの接続について、シナモンさんよりアドバイス頂きました。
どうもありがとうございますm(_ _)m
シナモンさんはSXVカメラを実に熱心に活用されています。
興味がある方はぜひ一度、拝見することをお勧めします。
http://cinnamon.livedoor.biz/archives/cat_50000495.html

AMTさんのページにも接続方法がありますね。
http://www.astrophoto.co.jp/HotnewsCameras-satsuei.html

2)の問題点については、焼津の御大、塩澤氏にお願いしてリングの一部を切削。
無事、イプシロン200+TrueTechフィルタホィール+SXV-H9でピントが来るようになりました。
塩澤さん、ありがとう〜。

SXV-H9とイプシロン200の相性は想像通り最高です!
高精細画素は、このクラスの焦点距離の望遠鏡で特に活きてくると感じています。
画素サイズで比較すると、9ミクロン画素のST7Customと比べ、画素サイズの比率で、約1.4倍の解像力があることになります。
つまり、言い方を変えれば、1120mmF4ということになりますね。
もっとも、これは余りに都合良く解釈しすぎていますが・・・。
然し、ST7Customより一段、分解能が高いことは間違いありません。


いずれにしても、600〜1000mmの光学系と組み合わせた際に、最大の効果を発揮しそうです。
それ以上の焦点距離ではシンチレーションの影響が大きくなりますので、一考する必要があると考えていますが、
実際のところはどうなるでしょうか。
いずれ実践してみたいと思います。

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