SXV-H9Cを使う


SXV-H9CはSXV-H9と同様にスターライトエクスプレス社の製品です。
外観上は全く差違が無い様に見えますが、最も大きな違いは、こちらはカラーCCDであることです。
SXV-H9と同様に高感度のExViewHADカラーセンサを備えた本機の実力はいかほどでしょうか。
未だ使いこなしているとは言えませんが、作例と感想を述べさせていただこうかと思います。

馬頭星雲  BORG76ED+クローズアップAC No.2 5分×28

赤にも青にも写りが良いのはモノクロのSXV-H9のと同じです。
然し、いささかカラーCCDでは勝手が異なるようです。
遠征してそれなりに暗い空の下、総露出時間はかなりかけたのですが、1回あたりの露出時間が短すぎた様に思います。
総露出時間の割に淡い部分が写ってきません。
とはいえ、写りが悪いというわけでもないとも思います。
1回の露出時間を伸ばせばまた結果も違ってきたかも知れません。
アンドロメダ星雲 BORG76ED+クローズアップAC No2 5分×9

上の馬頭星雲では長時間露光を試みましたが、こちらは標準的な露出時間にとどめてみました。
冷却CCDカメラではLRGB合成を行う為、同じ総露出時間では、同等の画像を得ることは困難かもしれません。
それこそがワンショットカラーカメラの魅力ということになるでしょう。

ただ、少々、ピントが甘かったかもしれませんが、微光星のシャープネスに不満が残ります。
カラーCCDの特徴の一つとして微光星のシャープネスが物足りないという点は挙げられます。
かに星雲 C5+セレストロンレデューサ+ケンコークローズアップAC No3 5分×20枚

純正レデューサにさらにクローズアップAC No3を加えてより短焦点化を図っています。
周辺像はSXV-H9の2/3インチの小さなCCDでも悪化する程で、あまりよろしくありませんが、
中心部はシャープです。
焦点距離は750mmくらいでしょうか。正確には測っていません。

かに星雲をみると、やはり赤も青も良く写っており、好感が持てます。

写真はいずれも縮小無しの画像ですが、どうやら、BORGの時はピントが甘かったか、、、
子持ち星雲 BORG76ED+クローズアップAC No2 5分×9

外気温の変化でピントが甘くなってしまいました。
ED系の屈折望遠鏡では、外気温の変化に注意しなくてはなりませんね。

星々の色合いも綺麗に再現している点には注目してください。

この写りを見てみなさんはどう思いますか?
はっきりいって、個人的には一眼デジカメと変わらないという印象を持ちました。

よく、冷却CCDカメラは16bitだから性能が良い、ということを聞きますが、実際には、12bitだろうが16bitだろうが、
ほとんど関係がありません。
と、いうのも実際に16bitをフルに活かそうとすると大画素サイズが必要で、ST9Eなどの様に20ミクロンクラスの画素を持ったCCDが必要になってきます。
本機の様な小画素CCDでは16bitのA/Dコンバータはほとんど無意味です。
一眼レフデジカメの中にも22bitのものが出てきましたし(こちらは画像処理を介在させることで22bitを活かしています)、
そろそろ冷却CCDカメラの性能を語る際に、16bitA/D変換だから・・というのは止めたいものです。

DIGICを始めとする映像エンジンは、画像処理で、このSXV-H9Cは冷却することでノイズ低減を図っており、
結果としてほとんど同様の結果となっています。
とはいえ、このカメラは140万画素。デジカメは最低でも600万画素なわけですから、、、
そういった観点から見た場合、本機の利点を見いだすことは難しいと感じました。

SXV-H9C BORG76ED+クローズアップAC No2 5分×10 総露出50分
ST7Custom MT160+レデューサ L=5分×6 R=5分×4 G=5分×3 B=5分×3 L画像露出30分 総露出80分

上の2つの画像は自宅から同時に撮像した画像です。
この2つの画像は各カメラの特徴を良くとらえていると思います。
MT160はF4.8ながら、実効F値は暗めです。
また、BORGの方はクローズアップACでほぼF値は5程度です。
つまるところ、かなり偏った見方ではありますが、どちらもほぼ同じ光量(実効F値)となっているということになります。

L画像だけでみれば、ST7Customは計30分です。対してSXV-H9Cの画像は50分ですが、画像処理の違いはありますが、淡い部分の描写に着目するとST7Customの方が上であることが判るでしょう。

実のところ、冷却CCDカメラの高い性能・・つまり高い感度と切れ味というのは、モノクロCCDであるということに尽きます。
もしモノクロセンサの一眼デジカメが出たら・・怖いですねェ〜 (((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
本気で冷却CCDカメラの存在意義というものが問われる事態になるのではないかと思いますョ。いや、まぢで。

さて、それはともかくとして、モノクロセンサではカラー画像を作る為に、L画像の他にRGB画像を取得しなくてはなりません。
このST7Customの作例では、RGBの総露出時間は、50分であり、それだけでもSXV-H9Cの露出時間に値します。
しかも、RGB画像では、SXV-H9C画像に及びません。

ST7Custom MT160+レデューサ R=5分×4 G=5分×3 B=5分×3 総露出時間50分

しかし、今回の様にもし、カラーCCDとモノクロCCDカメラと同時に撮影することが出来るならば、
カラーカメラの大きな活用の途が開けます。
すなわち、LRGB合成法のもっとも初期から提案され、実行されてきた、L画像をモノクロカメラで、RGB画像をカラーCCDで撮像する方法です。

ST7Custom MT160+レデューサ L=5分×6  RGB:SXV-H9C BORG76ED+クローズアップAC No2 5分×10

RGB画像もたっぷりと露出をかけている為、LRGB合成の結果は極めて良好です。
もちろん、L画像とRGB画像は同時に撮影しているので実際に撮影にかかる時間は最短で済みます。
得られるクオリティもこれならば不満はありません。

なお、本作は、L画像はST7CustomをMT160に取付け、主鏡で撮影しながら、セルフガイドでガイドさせ、本来、ガイド鏡とオートガイダーを乗せるべきガイドマウントにSXV-H9Cを搭載してカラー画像を得ています。
セルフガイドというのはこのような場合にも多大な恩恵を与えてくれます。

さて、このように低画素のカラー冷却CCDカメラに於いては、単体ではフォトコンテストに投稿できる様な素晴らしい写真が得られにくいという側面はあるものの、活用という点に於いて、モノクロカメラとのコラボレーションという点まで考慮した場合、非常に有益なカメラに成りうるという印象です。

また、ワンショットカラーというのは使っていて楽しいものです。
気楽にそれなりの画質を求めるのであれば、このSXV-H9Cはまさに打ってつけのカメラで、一眼レフデジカメの様に重たい画像ではなく、画像処理も含めて、極めて軽快です。
また、彗星撮像にも威力を発揮することでしょう。使いでのあるカメラであることは間違いありません。

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