SAC10(小画素サイズカラー冷却CCDカメラ)を使う


さて、前回、光害地向けのカメラを考えるでカラー冷却CCDは使えないだろうと書きました。
しかし、考えてみると、その種のカメラを使ったことが無いのも事実で、本当に使えないのか?疑問が出てきました。

いつもお世話になっているK&Rさんに相談したところ、SAC10-3.3をお借りすることが出来ましたので、テストを行ってみました。

■SAC10-3.3とは?

SAC社が販売しているカメラで、国内ではかつてAMT社が取り扱っていた製品の1つです。
SAC社のカメラの特徴としては、軽量コンパクトで、今回お借りした、SAC10-3.3の様に、
小画素サイズ多画素の電子冷却カラーCCDカメラや冷却を必要としない、CMOSカメラなど、
特徴的でユニークな製品を低価格で提供してくれています。

SAC10-3.3は、CCDセンサにSONY製ICX262AQ(1/1.8inch 3.3Mピクセル)を採用しています。
このCCDは2001年頃にコンパクトデジカメで多数採用された小画素サイズ(3.45ミクロン)のCCDセンサ
と思われます。
A/Dコンバータは天体用カメラとしては一般的な16bitが採用されており、48bitカラー画像を得ることが出来ます。
転送はUSBで行えます。

制御はMaxImDLから行うことが出来ます。

■撮影結果

さて、撮影はMT160にレデューサを取り付けて行ってみました。合成F値は4.8ですから、SAC10-3.3で使うにはF値がやや暗めですが、
カラーセンサであることを考えれば多少はオーバースキャンとなった方が、偽色の面では有利でしょう。

MT160+レデューサ SAC10-3.3 10分×4枚

さて、撮影結果です。ステライメージにてベイヤー変換、コンポジット他、ソフトウエアビニング2×2などの処理を行っていますが、ダーク補正・フラット補正は行っていません。
しかし、もともと低ノイズのSONY製CCDセンサをさらに冷却まで行っている為、ダークノイズはほとんどありません。
しかし、熱カブリ、いわゆるAMPノイズは上に若干みられますので、ダーク減算は必須と考えた方が良さそうです。
周辺減光は撮影時の透明度がイマイチだったこともありますが、多少、生じています。
色ごとに成分が変わる為、これの補正はやや、やっかいですが、ラージフォーマットのセンサに比べれば補正は容易でしょう。
この辺りはモノクロCCDに比べるとやはり光害地での撮影ではカラーCCDならではの欠点となりそうです。
しかし、一眼レフデジタルカメラに比べると、ゲインが低めに設定されているのでしょう。デジカメのように光害ですぐに飽和してしまうというようなことは無さそうです。

縦スジがいくつか見られますが、これが生じた原因は不明です。
別の日に知人が使ってみた際には生じていませんでした。

画素サイズが細かいこともあり、今回、ガイドを盛大に流してしまいました。原因は鏡筒バンドの締め付け不足にあった様ですが、
小画素サイズのカメラを扱うことの難しさを痛感させてくれました。
解像力はさすがに小画素サイズの威力を発揮してガイドが流れているものの、星雲は高い解像力を得ることが出来ています。
シンチレーションのことなども考えると、恐るべき性能を秘めている予感はあります。
それと、特筆すべきことは色彩の美しさ。
星雲はもとより、赤い星も青い星も見事に美しく再現されています。
また、かに星雲のフィラメントを見る限り、Hα線への感度も十分にあることが判るでしょう。
感度については、低いだろうと覚悟していたこともありますが、思ったよりも悪くはない印象です。
もっとも、総計40分かけていることを考えると、高いとは決して言えませんが・・
しかし、撮影結果だけからは想像していたよりも、優れたカメラであることが判ります。

結果は期待以上だったのですが、閉口させられたのは、転送速度の遅さです。
I/FはUSB1.1採用となっているので、300万画素を転送させるには時間が多少かかるというのは理解できます。
が、しかし、ピント合わせの際に、星の周りだけ画像を切り出しても転送速度の向上がさほど見られないのには閉口してしまいます。
小画素サイズということもあり、ただでさえピントは掴みにくいのに、転送速度の遅さでさらに難しいものになっています。
さくさく撮れるからSAC!というわけにはいかないみたいですねー・・
このカメラ、場合によってはサブカメラとして面白そうと思っていたのですが、この使い勝手の悪さでは・・・。

鹿林彗星 タムロン328 5分×3コマ

知人がSAC10-3.3で撮影したものですが、画像データを拝借させてもらいました。
彗星のコマとダストテイルの美しい色合いを見事に描き出しています。
イオンテイルもうっすらとですが、ちゃんと写っており、きちんとつかうとかなりの高い性能を発揮しそうなことが判るかと思います。
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