マトリクス色彩強調の使い方


ステライメージにはマトリクス色彩強調という項目があります。
CANP2004でmakitaさんが発表された内容を踏まえて追加された、極めて強力な色彩強調プログラムなのですが、
残念ながら、ステライメージ6になってもこの正しい使い方が取説にもガイドブックにも載っていませんでした。
そこで、僭越ながら、このプログラムの使い方をここで述べさせて頂こうと思います。

このプログラムは要するにR,G,Bごとに係数をかけてそれぞれの色彩を強調するのが一つの目的です。
言い換えれば、フィルターの純度をあげるとも言えます。

正しい使い方は、下記の様に、横一列の計数が足して1となるように数字を入力することになります。
これだけです。簡単ですね。

画像は、IDAS typeWフィルターを用いて撮像した近赤外線によるオリオン星雲ですが、ほとんど色味がありません。
これがマトリクス色彩強調で強力に彩度が強調されたのが判るかと思います。

さて、横一列の合計値が1にならない場合はどうなるでしょうか?
やってみれば判りますが、ホワイトバランスが崩れるのが判ります。ところが、これが光害地などではもともと緑色にカブるわけですから、あえて、カラーバランスを崩してみるというのも意外と悪くありません。
色調補正で崩すよりも自然な感じでカラーバランスを記憶色で整えることができます。

これまでこの処理項目について正しい記述がない理由はデフォルト値に難しい値が入っているからだと、思われます。
なぜこんな難しい値が入っているのか・・・
冷却CCDカメラに干渉フィルターの組み合わせの場合、RGBの各フィルタの透過率の裾の重なり具合などはほとんど同じくらいな訳ですから、上に示した様に単純化された値で良い結果を得ることができます(ホントはCCDの分光感度特性が関わってきますから・・・もう一工夫するとさらに、良さそうですネ)

ひょっとしたら、これはデジタルカメラで使われている値ではないかと思えてきますよね。

デジカメ画像をステライメージでベイヤーで読み込んでからカラー化すると、いまいち彩度が浅い画像になることは良く知られていますが、試しに、EOSkissデジタル(赤外カット改造)で撮影した画像にマトリクス色調補正をデフォでかけてみましょ。

なんだか、悪くない色彩になったと思いませんか?
ちと緑が強いのは光害がある自宅から撮影したからだと思いますが、M42の色彩自体はなかなか良好になったのではないでしょうか。
この大きな色彩の変化は他の画像処理で再現させるにはなかなか難しいと思います(PhotoShopで色相・彩度を調整することで可能だとは思いますが・・・一筋縄ではいかないかもしれませんね)。
マトリクス色彩補正がいかに強力な処理であるかがお分かり頂けるのではないかと思います。

さてなぜこのような複雑な値が入っているかといえば、これはフィルタの分光特性と色再現性が深くかかわっています。
一眼レフデジタルカメラでは、デフォルト値を参考に、多少簡易化して、良い値を探ってみる必要があります。
ただ、一度値を決めてしまえば、あとはそれをずっと使えますから、多少、苦労してみる価値はあるかもしれません???


いずれにしても、この処理は相当に強力な処理ですので、ぜひ活用してみてください。

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