LRGBの問題点

LRGB法は冷却CCDカメラでの天体撮像になくてはならない手法のひとつです。 しかし、何枚もの画像を扱っているうちに、いくつか問題を感じるようになりました。 ここでは、その感じた問題をあげていこうと思います。 もし、解決法などありましたら、お教えいただけると非常に助かります。

・星に色がつかない


左側がLRGB合成後の画像で、右側が使用したRGB画像です。
違和感、感じませんか?
そう、星雲は綺麗な色彩が出ているのに、星にまったくといっていいほど、色が付いていないのです。
原因はいくつか考えられますが、一番の原因は、L画像はノーフィルタで充分に露光しているので、暗い星まで写っているのに対し、RGB画像は短時間露光で済ませているために星が写っていないことです。
また、L画像はノーフィルタであるため、星雲の階調に合わせて画像処理を行うと、輝星の輝度レベルが高すぎ、階調がRGBと異なってしまうために色が付きにくいというのも考えられそうです(まあそれほど神経質になるほどのこともないとは思いますが・・・)。
さらに、短時間露光ではRGB画像のS/Nが悪いために、ガウスぼかしを大きくして、合成しなくてはならず、なおさら星の色が飛んでしまうのも原因でしょう。

解決策としては、
@L画像側に赤外カットあるいはネビュラフィルタを使い、恒星の写りは極力抑える
ARGB側の露光時間を多くとり、またガウスぼかしを抑えるためにRGB各プレーン2コマはコンポジットして作成する (RGB側も品質を良くするわけです)。

しか、ないかなと考えています。

・星の色が星雲の色に染まるetc

M17を例にとって、LRGBの問題点をみてみましょう。
Lrgbx2.jpg

このM17は実は、僕の手持ちの画像の中では傑作の一つだったりしますが、やはりいくつかの問題を感じます。
まずひとつは、黄色枠を見れば良く判ると思いますが、星雲中の暗い星が星雲色に染まることです。
原因は上の星に色がない時と同様、L画像に写っている星がRGB側に写っていないか、あるいはガウスぼかしでかき消されてしまったかではないかと推測しています。
もうひとつの問題が、緑枠で囲んだ部分で、にじんだ星が星雲中にはみ出してしまい、そこで色が変質してしまっていることです。
この画像は同じ光学系で撮像した2×2ビニングRGB画像を各プレーン2コマはコンポジットをして、ガウスぼかしを極力抑えている(0.5で合成)のですが、背景が暗い宇宙空間であれば問題がないのですが、星雲中の明るい輝星ではにじんでしまいいささか見苦しいものになってしまいます。
これを回避するには、RGBもビニングなしで撮り、さらにLRGB合成時のガウスぼかしは0にするしかないのか・・・?
と思っているところです。
以下の画像が、上記の考えを元に100SDUFにてビニングなしで撮像したものです。かなりの改善が見られるかと思います。 ただし、RGBにもそれなりの露出をかけています。
それでも、RGB法で同じ画質に達するにはさらに多くの露出を必要としますから、LRGB合成法によってかなりの露出短縮は実現できています。

以上、問題を感じている点をいくつか揚げてみました。 ぜひ、これらの問題を解決するいいアイデア(撮影/画像処理)が思いつきましたら教えていただければ嬉しく思います。

m8m20.jpg それにしてもLRGB法は素晴らしい処理です。
なにしろ、L画像とRGB画像は同じ日に撮像する必要はありませんし、光学系すら同じである必要もありません。 L画像は、高解像度長焦点で、RGB画像は明るい光学系で、という具合に撮影してもいいわけです。トータルで考えると効率をあげることができます。
これはこれまでのRGB撮影に比べると遙かに自由度が大きいです。
一度、良いRGB画像を取得できれば、あえて、新しく取り直す必要もないわけですし、以前に撮影したカラーフィルムの色を割り当ててみるのも面白いかもしれません。 CCDによるカラー撮影にさまざまな応用性を生み出した処理だと思います。

なお、左の画像は、CV-04Lにシグマの28-105mmズームレンズを付けて、105mm側で撮影したM8M20です。
カラーには、以前にS.G800で撮影した写真をフラットヘッドスキャナで読み込んだ画像よりもらってLRGB合成しています。
往年の名フィルムの色彩をぜひCCD画像に割り当ててみてはいかが?

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