FinePixS3Pro


FinePixS3Proはフジフィルムが2004年10月から2006年12月まで発売していた一眼レフデジタルカメラです。
イメージセンサには、スーパーCCDハニカムSRUを搭載しています。
画素が細かいR画素と大きいS画素を用意し、これらの2つの大小の画素から、画像を生成し、ダイナミックレンジを従来の4倍に拡大しています。
カメラボディは、NikonF80をベースとなっている為、デジタルカメラでありながら、アナログちっくな面も残されています。
具体的には、昔ながらのレリーズを使って撮影をすることが出来ます。
個人的にはこれが結構ツボで(笑)
いかにも撮影をしているという気分になります。(ちなみに写真のレリーズは、もう20年は使ってるヤツだったりします)


さて、FinePixS3Proは、CANP'03で天文ファンの意見を取り入れて頂き、Hα線への感度向上、ライブビュー機能による合焦のし易さなど、
天体写真撮影への対応も図られている機種です。
しかし、残念なのは、FinePixS3Proが発売される頃には、望遠鏡販売店による改造一眼レフデジタルカメラに注目が集まって来た頃であり、残念ながら、天体写真ファンの支持を得られたとは言えませんでした。
天文ファンの意見を取り入れてくれたにもかかわらず、受け入れられなかった不遇のカメラ。そんな感じがします。
改造デジタル一眼レフの普及があと少し遅かったら、このカメラの評価は非常に高いものになっていた筈であり、また、天体写真の在り方も、変わっていたかもしれません。
おおげさかもしれませんが、冷却CCDカメラや改造一眼レフデジカメなどの特殊カメラが主流の現状には少々閉口気味だったりします、、
もちろん、その性能の高さを考えると、当然といえば当然ですが、しかし、やはり、雑誌のフォトコンテスト欄に特殊な専用カメラばかりでは、、、興味を持つ人も少ないですよね。
そう思いませんか?
もっと一般的な未改造のデジタル一眼レフによる作例が多数掲載されるようになるといいなと思うのですが・・・。

フォトコンテストでジャンルを分けるなら、フィルムの部、デジタルカメラの部、特殊カメラの部(冷却CCD、改造一眼デジカメ)とかで分けてくれるといいのにね。
そうすると、普通のデジカメでもここまで写せるのかとか判りますし、さらに良い天体写真を撮りたいと思ったら、ステップアップとして改造デジカメや冷却CCDカメラがあることが、判りますよね。どこまで求めるかは人それぞれですが・・・
未改造機と改造機のジャンル分けを行えば、ある程度のベテランであっても、被写体によっては、特殊カメラの部で勝負するよりは、未改造機で撮影してコンテストに応募するとか戦略的な要素も加わってきて、より活性化すると思うんですよね・・。

■ライブビューについて
さて前述しました様にS3Proのウリの1つが、ライブビュー(スルーピント)機能です。
モノクロ表示30秒までの制限付きながら、リアルタイムで合焦を行うことが出来ます。
拡大表示で合焦させることも出来、迅速にピント位置を掴むことが可能です。

ライブビューでのピント合わせについては、見解は人によって分かれるところかもしれません。
左の月面はMT160の直焦点にコマコレクタを取り付けて撮影したもので、ピントはライブビューで合わせています。
ピクセル等倍で切り出して表示させています。
この日はバッチリとピントを出せていると思いますが、
別の日に撮影した写真では少しピントを外している様でした。

ピントは慣れ(経験)による部分が大きいと思いますので、まだまだ使いこなせていないだけかもしれません。

もちろん、外していたといっても、ほんの少しだけであり、気楽にかつ確実に(大失敗はしないという意味で)撮影することができます。
星食や彗星など迅速な対応を求められる天文現象には打って付けで心強い。

より正確に合わせたい場合には、ライブビューでピント位置を概ね掴みつつ、念のため、試写を行って追い込んでいくのがベストだと思います。

余談ですが、月の色彩はいかにもフィルムで撮影したかの様な色彩になりました。
フィルムエミュレーションモードを使ってることもありますが、この辺りはさすがにフジ!という印象です。

S2Proとの比較

FinePixS2Pro FinePixS3Pro

FinePixS2ProとS3Proを同日に撮影して比較してみました。露出3分1枚画像を、PhotoShopで読み込んで、WBをマニュアルで調整した画像です。
ピントはライブビューでFinePixS3Proで合わせて、S2Proを取り付けたものです。
ノータッチガイドで少し流れていますが (^^ゞ
傾向を見ることはできます。

まず一目で分かるのは、赤の写りの違いです。
Hα線への感度の高さが上がっているのは間違いないところでしょう。

FinePixS2Proと比べると、S3ProのS/Nが悪いです。
これは同じセンササイズ上に、S画素とR画素を配置している為、高感度のS画素の画素サイズも必然的に小さくなっている為と思われます。
メーカの資料では、AMPを改善し、S2Proとほぼ同等の画質を実現しているとのことですが・・・
ちょっとノイジーですね。

相対的に解像力は向上しており、S2ProではEOSKissDigitalに比べて重ためになってしまっていた星像もS3Proでは改善されている感じです。

■Dレンジ-ワイド

スーパーCCDハニカムSRUの目玉が、このDレンジワイドモードです。
感度が高く面積が大きいS画素と感度が低く画素サイズが小さいR画素によって得られた映像を合成することにより、
従来の4倍のダイナミックレンジを実現するモードです。
しかし、天体写真は基本的に露出不足であり、感度が低いR画素を使うことで、S/Nが悪化してしまう懸念があります。
つまり、天体写真に於いてはS画素のみで画像構築した方が良いのかもしれない・・・
幸い、ステライメージ6には、RAW画像からの現像時に、ダイナミックレンジ100%(S画素のみからの画像構築)〜300%まで選択することが出来ます。
(400%でないのはなんで・・?)←Ver6.0cアップデータで改善されてるそうです。

これで同じファイルで100%と300%で現像させて比較してみました。


少し話は変わりますが、ステライメージでは、FinePixS3ProのRAWファイルは、
ハニカム配列で開くことが出来ません。
RAW状態でのダーク減算は、ステライメージでは出来ません。
D-range 100% D-range 300%

さて、まずは暗部ノイズを確認する為に、自動レベル調整機能を使って全く同じ様にレベルを調整してみました。
心配していた暗部のS/N悪化は見られませんでした。

D-range 100% D-range 300%

こちらは、中心部の描写を比較してみました。
100%では中心部は完全に飽和していましたが、300%で現像させると見事に中心部が表現されてきました。
当たり前の結果と言われれば、その通りなのですが、こうしてきちんと効果を確認することができるとその威力を感じてしまいますね。

■ダークノイズについて

外気温7℃程度で3分露光のダーク画像です。

上は、25%に縮小した全体画像です。
左はピクセル等倍で中央付近を切り出した画像。
レベル調整はキツメにかけていますが、案外、ダークノイズは大きいです。

ダークノイズはS2Proに比べると大幅に改善はされていますが、それでもEOSKissDigitalと比べると、ダークの輝点が明らかに多いです。

ただし、熱カブリといわれるようなノイズは全く見られず、素直なダークノイズという感じです。
こういうノイズはRAW状態でダーク減算を行うと綺麗になりそうです。

さて、現像ソフトは様々な種類がありますが、ここではUFRAWを使ってみました。
UFRAWはフリーソフトですが、ダーク減算を行う機能も持っています。

UFRAWにてダーク減算あり。

あれ?ノイズ多いですね・・・。
ダーク減算による穴も開いているところを見るとダークは引かれている様ですが・・・
UFRAWにてダーク減算なし。

現像してみて気が付いたのですが、UFRAWで読み込むと、600万画素相当になっていました。
S画素のみしか利用していないのかもしれません。

ステライメージ6にて現像

ステライメージではRAW状態ではダーク減算を行うことは出来ませんが、こうして見るとダークノイズは残ってはいますが、ダークの彩度が薄れ、目立たなくなっています。
画像自体の彩度もUFRAWやYIMGに比べると低めになっています。
PhotoShopにて現像

PhotoShopで現像させた後、ステライメージに読み込んでレベル調整で明るさを揃えました。
こうしてみると、現像時に偽色の低減をおこなっているせいか、彩度が落ちている問題があります。(ちょっと意外・・)
もっとも、PhotoShopで現像後に自動レベル調整をつかって色調を再調整しているからかもしれません。
しかし、ダークノイズは彩度だけではなく、きちんと除去も行われているところもあります。
YIMGにてダーク減算

天文用現像ソフトとして有名なYIMG(Ver.2.2)を使ってダーク減算を行ってみました。
S3ProはCCDですので素子そのものの発熱量が大きく、ダークはなかなか一致し難いのかもしれません。
YIMGでもS画素のみ(たぶん)からの画像構築となるようで画素数600万画素となります。
それとハニカムCCDの性質上、YIMGで現像した場合、45度回転した画像となりますので、
回転補正をする必要が生じます。
YIMGにてダーク減算(欠陥画素補正)

最新版のVer2.81にはダークの設定で、欠陥画素の処理に、周囲画素平均があります。
欠陥画素判定レベル512で適用させて現像してみました。ダーク引きすぎによる黒点がかなり軽減されているのが判ります。もう少し強めの設定にした方が良いかもしれません。
今回、実験した中では最も良い結果となっています。

さて、こうして見てみると、FinePixS3Proの処理をどうやっていくか、なかなか難しいですね。
ステライメージ6やPhotoShopでの現像処理ではダークは引けませんが、ノイズは目立たない点、Dレンジワイドで現像処理できる点、12Mピクセルを活かせる点が魅力的です。
しかし、これは気温が比較的低めな3月に露出3分と短めの露出を行った時での結果です。
まじめに撮影を行おうとした場合、やはり10分程度の露出をかけたくなってきますから、やはりRAW状態でのダーク減算を行いたいところです。
その場合、S画素のみ600万画素となりますが、YIMGを使ってダーク減算を行うのがベストだと思います。
どのみち、有効1234万画素といっても、S画素617万画素、R画素617万画素からの補間処理となりますから、星像自体のシャープネスはさほど変わらない様に思います。
実際には、ステラで現像させたファイルを約600万画素に補間縮小させると若干、星像のシャープネスが良い(と、いうことはプリントで差が出るということ)ですが・・。

なかなか処理手順の確立が難しいところですが、今後、使っていく中で確立していこうかなと思います。
RAPを使うと、ダーク減算後にRAF形式に戻せる様ですから、ダーク減算後に、ステライメージもしくはPhotoShopで現像という処理フローができそうです。
もっとも、RAPは持っていませんので、今後、使っていく上で必要性が高そうであれば購入検討してみようかと思います。

■その他

これは販売当時から良く言われていたことですが、書き込みは滅茶苦茶遅いです。
Dレンジ-ワイド時のRAWファイルは容量が25MBにもなる為、これの書き込みに時間がかかります。
4GBの一般的なCFを使った場合には約20秒もの時間がかかりました。
2GBのxDピクチャカードを使ってみると約15秒程度まで短縮されますが、Dレンジワイド設定時は、連続で3枚しかシャッタが切れず、書き込み完了まで、
待たされてしまいます。
一般的な天体写真では5〜10分も露出するわけですから、そこから20秒待たされても何も問題はありませんが、星食など連射を効かせたい時には、
この書き込みの遅さは致命的な欠点となりそうです。
それでも、Dレンジワイドモードの幅広いダイナミックレンジは輝度差が大きい星食には非常に有効に機能しそうです。

inserted by FC2 system