コンポジットの効果


すでにコンポジットについては、その効果はよく知られていますし、ごく基本的な手法です。 しかし、基本だからこそあえて実際に確認してみる必要を感じました。
とりわけ、何枚コンポジットする必要があるのか、今後撮影を進めていく上でも重要な問題です。
 コンポジット(加算)2枚
 コンポジット(加算)6枚

まず、実際の撮影を考えて、露光時間を十分与えて、十分なS/Nの画像を使って比較してみました。撮影は100SDUF屈折望遠鏡(Fno4)にCV−04L冷却CCDカメラ、赤外カットフィルタを用いて10分の連続露光で撮影を行っています。
2枚コンポジットの画像では全体的にやや荒れ気味であり、やや不足の印象があります。 6枚コンポジットまで行うと、星雲の淡い部分も滑らかになってきて、背景のごくごく淡い部分も描写できそうです。
ただ、まだ、少し荒れている感じではあります。
このことから考察すると、コンポジットは2枚では不足、6枚でまず充分な画質改善が期待できると考えられます。
4枚も作成したのですが、6枚画像と比較すると、まだ不足という感じでした。
この画像の撮影時の冷却温度が−25℃だったことを考えると、温度が高いときほどこの傾向はより顕著なものではないかと思われます。

今後は、例えば、10分1枚と3分3枚の比較など、行ってみたいと思っています。


コンポジットによる画像比較 第2弾 10分露出vs5分露出2枚コンポジット!

今回は様々な側面から、コンポジットについて検証していきたいと思います。 もっとも気にかかるのは、果たして長時間露光を行った1枚の画像と、ある程度の露出時間をかけて撮影した画像をコンポジットするのとではどちらが良いのか?ということだと思います。
通常、前者が良いとされますが、実際の撮影では果たしてどちらが良好であるか検証してみました。

CV-04L 露出10分1枚(-25℃冷却) 露出5分×2枚(-25℃冷却)
ST7E 露出10分1枚画像 露出5分×2枚加算画像

トータルの露出は同じ10分です。各撮影条件は統一してあります。
画像処理はどちらも8枚ダークコンポジットを行った画像を減算してダーク補正を行い、5分露光の方はダーク補正後に加算処理してあります。
さて、どちらの画質が果たしてよいと判断しますか?
私は、星雲の階調や荒れ具合から判断して、ごく少しではありますが、5分×2コマの画質の方が上であるように思います。

なぜか?1回当たり露出は伸ばした方が結果が良いはずではないのか?
これにはいろいろと原因が考えられますが、いずれにしても我々の冷却CCDカメラが常に冷却不足であることに起因すると思われます。
まず、1回の露光時間を延ばすことにより、暗電流もまた増加すると、いうことを忘れてはいけません。
これは冷却温度不足の我々のカメラで常に抱えている問題であり、カメラや冷却温度に次第ですが、ある程度以上の露出をかけても、それ以上はS/Nがあがってこないという、フィルムでいう相反則不軌に似たような現象が起きてしまうのではないかと考えられます。
つまり、Sがあがってきても、Nまで増大してしまうために、相対的に画質(S/N)が変わらないというわけです。

その次に考えられるのが、冷却温度の安定度の悪さです。
冷却CCDカメラを使っていると、冷却温度が常に変動していることに気づかされます。
冷却温度が不安定なため、ダークフレーム減算を行っても、完全にダーク補正されずに、S/Nを損ねてしまいます。
例えば、この画像からでも、右端真ん中あたりに5分露光のものには見られない輝点が10分露光の画像に見られます。 これがダークの不一致によりもたらされたものである可能性もあります。
もちろん、ダークノイズの量が増え、ふらつきによる誤差がより大きくなると思われる1回あたりの露出時間が長いものほど、ダークによりS/Nを損ねる可能性が高いと思われます。
もちろん、冷却温度が高くなるほど、より誤差は大きくなるため、夏場に撮影した画像に黒い穴だらけになったり一面白い斑点だらけになったなどという経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
あと、最後に、CCDのノイズは、暗電流による固定パターンノイズだけではありません。ランダムノイズも発生します。 その中にはデータ読み出し中に乗ってくるノイズもあり、複数枚の画像をコンポジットすることにより、それらのノイズを低減することが可能です。
また、突然、飛び込んでくる宇宙線などのノイズもあり、コンポジットなしで済ますというのはなかなかリスクが大きい気がします。

でわ、1回あたりの露出時間をとことん短くしても良いかというと、もちろんそんなことはなく、やはりある程度の露出時間は必要です。

(2004.1追記)
なお、上記はノーフィルタによる画像での比較でしたが、Hαフィルターを用いた場合は、これとは逆の結果になり、
5分×2枚よりも10分×1枚画像の方に軍配が上がるようです。

露出5分1枚(-25℃冷却) 露出1分×8枚(-5℃冷却)

上記画像は、撮影光学系こそ同じ機材であるものの、冷却温度はもとより撮影日も違うため、一概に比べられません。
しかしながら、あまりにも荒れた画像は何枚重ねても、なかなか満足のいく画像改善が図れないということは判るかと思います。

と、いうわけで結論としては、
・コンポジット枚数は多いほど良い。8枚以上あればGood!
・1回あたりの露光量は長ければ良いというものでもなさそうだ。
冷却温度・撮影光学系(とりわけF値)・撮影対象の輝度を考え、適宜対応を図る必要がある。特に冷却温度が高い夏場は1回あたりの露光量は短めにし、コンポジット枚数を増やした方が得策なのではないかと考える。

私の経験からいえば、CV-04L(kaf400L)であれば、F4の明るい光学系であればだいたい1回の露光時間は5〜10分でコンポジット枚数8枚を実現すれば、たいていの天体で美しい画像が仕上がると思われる。
より感度の高いST7Eでは、さらに短い露光時間で良い画像を得ることができそうだ。 今のところ、5分×4枚というのをベースに撮影していこうと考えているのだが、もう少し熟考する必要があるかもしれない。
3分×6枚とした時にどちらが画質が良いか、確かめる必要があると感じた。
また、ST7Eの感度であれば1分露光であってもF4の明るい光学系との組み合わせであればコンポジット枚数を増やすことで、充分な画質を得ることができる可能性もある。
まだまだ、いろいろと、考えるべきこと、探っていくべきことがありそうです。


再確認コンポジット枚数
ST7Eで撮影した画像にて、何枚コンポジットを行うのが良いか再確認してみました。

◆データ◆
MT-160(D=160mm f.l=1000mm) ST7E(NABG) 冷却温度−30℃

連続露出5分 1枚(コンポジットなし) 連続露出5分 2枚加算
連続露出5分 4枚加算 連続露出5分 8枚加算

コンポジットなしの1枚画像では画像が荒れているのが明白です。
2枚コンポジットを行うと、画質は劇的に改善されているのが判ります。が、人にもよるとはおもいますが、まだまだ不満が残ります。
4枚コンポジットは、私がST7Eで充分な画質となると判断していた枚数です。コンポジットなしに比べれば、画質の差は明確です。
しかし、8枚コンポジット画像を作成し、比較してみたところ、さらに画質が改善されることが判りました。
どうやら、4枚コンポジットではまだまだ足りず、8枚コンポジットまで行った方が良い結果が得られるようです。
なお、6枚では4枚と8枚の中間といったところでした。まだ少し物足りません。

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