独断と偏見による冷却CCDカメラの選び方 V 光害地に向くカメラとは?


DSIProを使ってみて、改めて光害地向けのカメラにはどのようなものが向いているのか考えさせられました。
DSIProを使うに書いた様に、チップサイズの小さなCCDカメラの意外な性能に気づかされたのです。

ラージフォーマットのカメラでは、空の写る範囲(写野)が広いため、光害地では光害が激しく写り込み、
これの補正が大変難しくなりますが、反対にスモールフォーマットでは、写る範囲が狭いため、背景の偏りを気にしなくても良い、
ということがはっきりと判りました。

確かに、自分のこれまでの経緯で、ST7EからCCDチップをST8E相当に交換したことがありましたが、
交換後は周辺減光をはじめとする背景ムラにずいぶんと悩まされたものです。
ST7Eに採用されているKAF401E CCDチップは、1/2インチ、約6.4mm×4.8mmの小さいものですが、
ST8XMEに採用されているKAF1603ME CCDチップは1インチ、約12.7mm×9.5mmと4倍の大きさがあります。
それでも、APSサイズの23.0×15.5mmと比べると小さいのですが、それでも光害があると背景ムラが気になってくるものです。
下の画像は2/3インチCCDのSXV-H9による画像ですが、ずいぶんと周辺減光があるものです。


2/3インチCCDは8.8mm×6.6mm。1/2インチCCDに比べると1.3倍くらい大きいCCDということになります。
ところが、もし、これが1/2インチCCDの6.4mm×4.8mmであれば、周辺減光についてほとんど無視できるようになることも、
この写真から判るのではないかと思います。

もちろん、周辺減光はフラット補正をはじめとする画像処理で補正することは可能です。
可能ですが、あまりに大きい周辺減光はなかなかフラット補正一発で補正しきれるものではありませんし、
フォトレタッチソフトの機能を利用するにしても、時間がかかるようになってきます。
したがって、周辺減光がどうしても大きく出てしまう光害地では、小さいセンササイズの方がどちらかというと向いていると言えます。

さて、次に、画素数も重要です。
DSIProは高感度CCDは採用されているものの、その画素数は25万画素しかありません。
これでは美しいプリントを得るのはとうていかないません。
やはりメガピクセルは最低限でも欲しいものです。

ところで、小さいCCDで多画素となると、
SAC10-3.3やスターライトエクスプレスのSXV-M8があります。
しかし、残念なことに、これらはかつてのコンパクトデジタルカメラ用のCCDを用いたカメラで、カラーCCDです。
カラーCCDではダメか?
光害地に限定して言えば、やはり得策ではないというのが自分の結論です。
モノクロセンサと比べ、以下の2点でどうしても厳しいものがあるのです。
1)カラーフィルターで光量が1/3になる
カラーCCDでは、センサの前にカラーフィルターが置かれています。
この部分で各画素に入る光が大幅にカットされてしまいます。RGBの3色に分けられてしまうのですから!
その光量、つまり感度は1/3になってしまいます。

2)光害源は緑色
光害の主成分は、ナトリウム灯や水銀灯によるものです。
ナトリウム灯は、589nm、水銀灯は特に強い546nmを始めとする複数の輝線を青〜緑色の波長域に持ちます。
これらは、緑フィルターに当たる成分です。
光害で緑色に被るのはこれらが原因ですね。
ところで、カラーCCDにとって最も重要な色は何でしょう。
応えは簡単ですね。ベイヤー配列ではR,G,G,Bの4画素で表されますが、この4つのうち2つを締めるのがGreenです。
このGreenを中心としてカラー化されるわけですが、光害地ではこの重要なGreenが強く光害に侵されてしまうわけです。
モノクロCCDカメラでも、三色合成画像ではGreenの画質が重要になるのですが、LRGB合成法が普及している現在では、
Green画像の重要性は薄くなります。

以上、2点より、光害地ではカラーセンサはかなり不利になると言えます。

さて、カラーカメラはハブるとなると、なかなか条件に見合うCCDカメラが見あたらないなぁ・・・と思っていたのですが、
1つ、条件に見合うカメラがありました。
それはAtik314Eです。
CCDセンサーには、SONY製ICX205ALを採用しています。
1/2インチ140万画素CCDカメラです。さすがにこのCCDサイズで140万画素ともなると1画素のサイズは、4.65μmまで小さくなってしまいます。
画素が細かいということは、それだけ高分解の画像を期待できる反面、明るい光学系を要求します。
F4ないしF5クラスの光学系と組み合わせるのが良いでしょう。
SE200やR200SSとの組み合わせがベストマッチとなるでしょう。
F6クラスとなってしまうと、光学系の性質上、結像性能が画素サイズよりも遙かに大きくなってしまい、性能が活かせません。
光害地では明るい光学系の方が有利となりますし、このカメラを使うなら、明るいニュートン反射で使いたいものです。
あとは、このCCDの量子効率はどの程度あるか気になってきます。
あるカメラベンダーのホームページから引っ張ってきました。


KAI4020MやICX285AL等と共に描かれていますが、ICX205の量子効率はピークで40%ちょっと。
残念ながら決して高いとは言えません。HADセンサであるこのCCDは現行のExVirewHADやSuperHADセンサと比べて設計がやや古いのかもしれません。
とはいえ、十分、実用レベルにはあります。
ただ、Hα線での量子効率は20%程度しかありませんから、Hα単色撮影には厳しいかもしれません。

とはいえ、カメラの価格・画素数から考えるとなかなか魅力的なカメラではないでしょうか。ST4互換ポートもあり、ガイドカメラとしても、
使うことができそうです。

画素サイズから、R200SSの800mmでもまるで長焦点で撮影したかのように、高解像の映像が得られるハズです。
感度もF値の明るさで十分にカバーできますから、これはベストマッチに近い組み合わせではないかと思います。
R200SSや、Meadeのシュミットニュートン、SN-10、SN-8、ケンコーのSE200などをすでにお持ちの方にとってはいい選択肢となるかもしれません。

・・と、思っていたのですが、このCCDを使ったカメラをお使いの方から、
ICX285の1/3〜1/4くらいの感度しかないのではないかとの情報を頂きました
ICX205は、感度が低いという情報を頂きました。やはりSuperHADですらない小画素CCD、、感度は相当に落ちるのか・・・。
う〜ん、F4の明るい筒と組み合わせたとしてもまだ分が悪いのカナ・・・。

その他のカメラとなると難しいですが、金銭的に余裕があるのであれば、少し大きめの2/3インチCCDになりますが、
感度と画素数のバランスに優れたICX285ALを採用したカメラや、画素数は少ないですが、超高感度CCDであるKAF402MEを採用したST402MEなどを選択した方が
良いかもしれません。

ラージフォーマットの冷却CCDですら普及の兆しが出てきている中でのスモールフォーマットの奨めでしたが、
個人的には画一化というのはあまり好きではないので、この種のタイプのCCDでもなんとか実用に足ものはないものかと思ったのでした。
だって、みんながみんな、高性能の360〜800mm程度までの屈折望遠鏡に一眼レフデジタルカメラまたはラージフォーマット冷却CCDカメラと、機材が似てきたら、
あんまり面白味がないですよね?
もっと多様化していた方が面白いと思うんですよね。

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