独断と偏見による冷却CCDカメラの選び方 T


とりあえず、小難しい話しよりも、知る限り、各メーカ製の特徴などを述べておこうと思います。
各メーカのカメラは知人のを使ってみたり、生データを頂いて、感じた感想ですが、
あくまでも独断と偏見なので、その点、ヨロシク σ(^^;

■メーカによる特徴

SBIG 国内代理店:国際光器
冷却CCDカメラをアマチュア天文家向けに供給した初めての会社がこのSBIGと思われる。
セルフガイドやAO-7など、天体専用機ならではの機能が充実しており、このメーカを選ぶのであれば、
もちろん、そういった機能のフル活用を先ず優先して考えたいものです。
カメラ自体の性能という点では、残念ながら、画質を含め、優れているとは言い難いと感じています。
もし、ガイド鏡システムでの撮像を念頭におくのであれば(セルフガイドを活用しないのであれば)、他社製を選択した方が良いと思います。

ただ、国内でもユーザが多い点で、多数の情報を得ることができる等メリットも大きく、困ったことがあっても、きっと情報を得ることができることでしょう。
サポートは、SBIG本社に連絡を取れば、まず良好で的確な対応をとって貰えることが多い・・と思います。
(そうでないケースもありますが・・・うーん)
国内総代理店にはマージンに見合うだけのいっそうの努力を期待したいものですね。
なお、並行輸入品や個人輸入品のサポートを国際光器に求めるのは筋違いというものです。
日本語ソフトや総代理店でのサポートを頼みとしたいならば、価格が高価であっても、総代理店より購入すべきです。

なお、乾燥剤の乾燥や、CCDチップの清掃など、基本的なメンテはユーザが行う必要があります。
その点に不安を感じる場合、国内総代理店から購入し、メンテナンスを行って貰えばいいかもしれません(有料)、
ちなみに、自分のST7Eは買ったばかりというのに結露するわ、疑問点があるので、一端、総代理店に送り返したら、
ゴミを付着して返されて、自分で早速分解して清掃しなければならないわで、メンテナンスはユーザが行うカメラなのねーという印象デス。
基盤もSTシリーズでは、面実装基盤ですらないので、性能にバラツキがあるのでは?と疑ってしまうのは偏見でしょうか。
ST402からはちゃんと面実装になっているようですから最新のSTLなどは安心して良いでしょうが・・。

STL-11000Mは、35mmフルサイズ冷却CCDカメラ。35mm フルサイズとくれば、まずSTL-11000とくるほど有名なカメラになっているが、USB1.1での転送となるので、実は他社製と比べ転送時間がやや遅いという欠点があります。
また、その他いくつか軽度な問題と思われることがあるようなので、購入を考えた場合に、まずは実際のユーザに相談してみることを強くお勧めしておきます。

ST10XME、ST8XMEは、超高感度と合わせAO-7使用で長焦点で高分解能の画像を得るのに適しています。
海外のサイトを見ても、非常に優れた作例が多くあります。

ST2Kは、個人的には中途半端な機体という印象が強いのです、同価格帯では面積がやや大きめのCCDを採用していること、セルフガイドが使えること、ABG仕様であることが大きなメリットではありますが、
デメリットは強拡大にはやや感度不足で不利な点。画素数が192万画素しかない点。デジカメが普及している現在では、被写体を考えた場合に差別化がとりにくいのでは?と思ってしまうわけです。
国内ではベテランが使用しているため、良い作例が多数あるが、海外に目を向けると優秀な作例は少ないようであまりみかけません。
使う望遠鏡や狙う焦点域と感度の問題もあるのでしょうが・・。

ST2000XCMは、これこそSBIG製品の威力をもっとも発揮できる製品だと思います。
セルフガイド機能は、カラーフィルターを通すと案外ガイド星を失うことが多く、メリットを損ねます。
ところがカラーCCDを使えば、その制約が全くなくなる(カラーフィルタを使わないからね)ので、非常に使い勝手が向上するわけです。1000mmクラスではガイド星が見つからなくて困るという事態はほとんど無いと思います。
ただ、偽色が多い点が難点。
偽色は長焦点ではシンチレーションで肥大する星像で緩和される為、カラーCCDは実は長焦点鏡と相性は悪くありません。
但し、感度が低い点を考えた場合、F値が暗いと不利になります。
ST2000XCMの場合、AO-7と組み合わせると、常にAO-7をフルスピードで作動させることも出来る為、非常に大きなメリットとなる可能性も秘めています。
SBIGらしいエポックメイキングな機体だと思います。

ST9Eは大画素サイズの機体で解像力(この場合、分解能と画素数の両方の意味)と引き替えではありますが、その圧倒的な感度は目を見張るものがあります。F5クラスの望遠鏡に繋いだ場合、わずか2、3分のノータッチガイドでも4フレームもコンポジットしてしまえば、非常に美しい写真があがってきます。
フォトコンテストを目指した場合、その画素数25万画素はあまりに少なく、厳しいものがありますが、ガイドに不安が残る架台であっても、目を見張る様な美しい写真を得ることができます。ホームページ掲載などには25万画素でも充分でしょう。
また、SBIGのカメラはTDIに対応しているものがあります。
TDIスキャンはここでは詳細は避けますが、CCDの読み出しと日周運動をシンクロさせることで、経緯台でもまるでガイド撮影の様に星を点像に止めることができます。
この際、なるべく大画素のCCDの方がより高画質を得ることができ、ST9Eはまさに打ってつけなのです。
ドブソニアンであっても、非常に美しい写真を得ることができるカメラ・・・それがST9Eなのです。

TDIについては、SBIGの
http://www.sbig.com/pdffiles/ST7-9ICameraApps.pdf
の文書に作例があります。
国際光器での作例実験はこちら。
まあ、少し言わせて貰えれば、TDIは、実はハレー彗星接近時に日本が打ち上げた探査衛星に搭載されたCCDカメラで使われてるんですけどね、、
少なくともTDI駆動法の天文応用という点では、日本が世界に先駆けて行った技術だと思います。
FLI  国内代理店:田中光化学工業
最近、国内でも普及してきた感があります。
そのしっかりとした造りと、高冷却性能は同種のCCDチップを使用した他社製品より確実に一歩上の画質を見せる。
産業用CCDに近いものを感じさせる画質を感じています。

ただ、付属ソフトは、少なくとも、自分がME-2を借用して使った限りでは、バグだらけであくまでもおまけ。
いちおう、ここを踏めば地雷が爆発すると判れば、回避できるので、一通りの機能が揃っていて不満はなかったが、
MaxImDLでの制御を行うことを強くお勧めしたい。

基本的にはメンテナンスフリー。
ただし、冷えが悪くなったなと思ったら、メーカに送付して真空チャンバの吸引を行う必要があるでしょう(4、5年は大丈夫だそうです)
ビットラン
1995年頃から冷却CCDカメラを天文アマチュアに提供しています。
現在では、天文用だけではなく、産業用CCDを多数手がけ、主力はそちらでしょう。
ただ、そこで培われた技術がフィードバックされているため、高画質には定評があります。
国内で生産・販売しているため、サポートの面も良く、強い安心感はあります。
ただ、ソフト面が弱く、ハングアップしたりするという話を良く聞きます。
また、天体向けの開発を行っていないため、海外ではデファクトスタンダードであるMaxImDL/CCDでは、制御できなかったり(2008年以降、対応スミ)、オートフォーカサー、フィルタホィールなど海外の優れたユーティリティ類は一切使えない点に注意が必要。
制御ソフトは使った限りでは、ちょっとごちゃごちゃしていると感じたものの、総じて使いやすく、ピント合わせもやりやすかった。機能も充実しています(だからごちゃごちゃしてると感じたわけで・・)


天体用には、ラージフォーマット対応のBNシリーズと小型軽量のBJシリーズがあります。
とりわけ、お勧めなのが、BJ-41Lで、ABG付きながら高感度を実現しており、電子シャッタで高速シャッタが切れることから、月から星野まであらゆる天体に向くカメラになっている。
ただし、現在では、一眼レフデジタルカメラのエントリーモデルでも6Mピクセルであるのに対し、1.4メガピクセル。
CCDの素子サイズも2/3インチ(だいたい8.8mm×6.6mmくらい)と小さい点をどう考えるかが問題ですね。
長焦点撮影ならば優秀なオートガイド装置、AO-7があるSBIGに劣るし、かといって短焦点撮影では画素数がもの足りないでしょう。
BJ-42LはKodak製KAI4020Mを採用した2k×2kの4メガピクセル機。面積も15mm×15mmと大きめで魅力的であるが、
筐体が冷えにくいという問題があるそうです。
また、KAI系CCDの特徴をそのまま踏襲しているため、Hα線への感度は低め。
とはいえ、コストパフォーマンスに富んだ機種だと思います。

この機種もメンテナンスはメーカにて行って貰うしかありませんが、買ったばっかりでゴミ付着などはないようですし(当たり前)基本的にはメンテナンスフリーでしょう。
StarLightXpress
スターライトエクスプレスの特徴はなんといっても、ダークは要らないというスタンスで設計されている点に尽きると思います。
SBIG製のユーザにはこれはとても不安なことと感じますが、実際、ローノイズのCCD素子を採用してあるスターライト製では、ダークなど不要でした。
筐体はいたってコンパクトな造りで望遠鏡にも負担がかかりません。
反面、密閉度が低く、結露しやすいという話しを良く聞きます(自分はまだ未経験)
分解もいたって簡単に分解できるので、このカメラもユーザでのメンテナンスが基本なのかな?と思います。
分解した感想からいえば、確かに結露に悩むことになりそうな造りです。
USB2.0を採用しているため、転送が実に速く、ストレスが全くありません。
電子シャッタを採用しているので、高速シャッタが切れます。
メカシャッタがないので、ダークを撮影したい場合には望遠鏡にフタをせねばならず不便ですが、
そもそも、ダークが不要なので、問題はありません。良くできてますねー

長焦点撮像には、SXV-AOという補償光学系があり、国内でも少数例ですが、使用実績があります。
自分も興味津々の装置ですので(っつーか、それにかけるしかないような・・)いずれ使ってみたいと思っております。

ソフトウエアは、ス社製のは考えてみたら使ってませんでした。
ただ、昔から、ソースコードは公開されてますし(Visual Basicだったかと)、サンプルという感じがします。
制御は、MaxImDLやAstroArtなど、様々な海外製画像処理ソフトが対応している為、不自由はしません。

一眼レフデジタルカメラに採用されるAPSサイズのカラーCCDを使った、SXVF-M25C、
BJ-41Lと同じく超高感度ABG仕様のICX-285ALを採用したSXVF-H9、
BJ-42Lと同じく、プチラージチップ(15mm×15mm)、KAI4020Mを採用したSXVF-H16があります。
また、デジカメ用の小型(1/2.7インチ)、高精細画素(3.15ミクロン)の3MピクセルのSXVF-H8Cなど意欲的な製品展開も行っています。
とはいえ、SXVF-H8Cはまともに使うには、明るい光学系でないと難しいでしょう。
   また、最近では、35mmフルサイズ11MピクセルのSXVF-H35、他社に先駆け、同じく35mmフルサイズながら、16MピクセルのKAI16000を採用したSXVF-H36なども発売しており、実に意欲的な製品展開を行っています。
また、かつては、インターラインCCDの特徴を活かし、メインチップでセルフガイドが出来るカメラも提供しておりました。
現行ラインナップではCCDがプログレッシブスキャンとなった為でしょうか。この機能が採用されていないのはとても残念。
武藤工業/光映舎
CVシリーズ。10年ほど前、1995年頃にリリースされた製品です。
高品質がウリの製品で、確かに、いぢっていると、SBIGのST7Eと比べると、ずいぶんとしっかりと造られていて、感心してしまいます。
STシリーズでは、旧パラレルポート機では、露出終了後、実にゆっくりと、ST8では1分もかけて、PCにデータを転送してくるのですが、実は1分もの長い間、デジタル化しないでCCDに電子を置いておくのはノイズの面で相当に不利です。
そこで、CVシリーズでは本体コントローラにメモリを持ち、CCDからコントローラまで高速転送、転送後、コントローラのメモリからPCにゆっくりと転送する仕様をとっています。
また、A/Dコンバータに18bitを採用しています・・・が、これって意味あったんですかねー・・・。
RAWのままで送られてくるとなるとあんまり意味がないよーな・・・。下位2bit切り捨て。どうなんですかねー。
最近のデジカメでは、PENTAXのK10Dに22bitA/D変換が採用されていますが、あのカメラでは22bitA/Dに変換後、画像処理を加え、16bitに圧縮した上で出力するのでかなり意味があるだろうと思います。

それはともかくとして、同じ素子を採用したSTシリーズに比べ、画質が高いのは間違いないです。
ただ、筐体の放熱が悪い点(ファンをつけるだけで驚くほど改善しますが)、温度制御を0.5℃のレベルでしか行っていないため、夏場など冷えない時には、ダーク減算を行っても、綺麗にダークが引けないことがあり、そこで画質を損ねます。−20℃まで冷やせると、実にいい画質を得ることができるのですが・・。

対応する制御ソフトとしては、オリジナルのCCDMasterの他、CCDPlus、UCCSCVDriverCCDDrive、フリーソフト、 など様々なものがありましたが、UCCSやCCDDriverは使ったことがありませんが、総じて、フォーカスが合わせにくかったり、連続撮影はできても自動保存してくれなかったり自動保存に非常に時間がかかったりと、今ひとつという感じでした。

パラレルポート機しかなく、付属制御ソフトもWindows98までの対応ですので、残念ながら過去の機種となってしまいました。
また、残念ながら、星から、水平方向に涙の様に流れるストリークという現象がとりわけビニング撮影で出ることがあります(SVシリーズでは対応済み)

新規で購入することはもう無いかと思いますが、中古などで購入する際には、制御ソフトの件と併せ注意です。
とはいえ、画質も良く、個人的には未だに使っているんですけどね。
Meade
Pictor416Xを使ったことがありますが、制御ソフトは屋外での使用を考慮し、メニューから選ぶだけで露出が設定できたり、画面の文字も大きく見やすかったりと、ソフト面では秀でていた印象が強いです。
画像転送はSCSIで行う点が特殊でこれの設定に苦労したり・・というのももう昔話しでしょうかね。。。

CCDチップには保護ガラスなしのものが使われ、よりいっそうの高感度化が図られていました。
ただ、保護ガラスなしは清掃ができませんので要注意。
メカシャッタなどメカの部分が弱く、バッテリーがあがってきて低電圧になってくると、壊れたりしたそうです。

その他、DSIは使ったことがありますが、うーん、感度が低いッス。
制御ソフトもなんかごちゃごちゃしていて・・って印象。実際に使ってみるとそう難しくはないんですけど、ね。とっつきにくい面はありますね
別項で述べていますが、後日入手したDSIProは実に使いやすく、オススメできます。
Orion
StarShotDeepSpaceImagerを使いました。
付属のMaxImDL EEでの制御はやりやすいのですが、いかんせん、感度不足を感じました。DSIよりは良さそうでしたが・・。
感度的には、SXV-H9Cと同じ、ExViewHADセンサを採用しているので、もう少し写りに期待したのですが、星を写して楽しむという用途には今一歩といった感じでしょうか。
カメラ自体はいたってシンプル。ST6を小さくした感じで、個人的には気に入りました。
写りがもう少し良ければ文句ないのですが・・・。
オートガイダーとしての性能は自分は確認しませんでしたが、高性能だそうです。






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