戦慄のブルー


私の場合、いろいろと考えもあって、三色分解撮影時にもビニングはしていません。
そのおかげで気づくこともあります。
ここで記述するのも、そのひとつ・・。
青画像の解像感の高さについてです。

以前、M33を撮影した時に気づいたことがありました。
それは、B画像とG画像を見比べた際に、B画像の方が迫力があったのです。
まずは、その画像をみていただきましょう。

R200SS ST7E  IDAS製Blue 5分×5枚
R200SS  ST7E  IDAS製Green 5分×7枚

比較用に撮影したわけではないため、正確なことはいえませんが、露光時間の違い等を差し引いて考えても、Blueの方が迫力があります。
暗黒帯や、渦の腕にある恒星雲がよりハッキリとしているようです。
ま、まあ、Gの方はガイドがちょっと甘いけど (^_^;)
しかし、気になるデータではあります。
と、いうわけで、今回それを確かめてみました。

R200SS ST7E IDAS製Type3 R,B   B:10分×2,R=5分×2

各画像はなるべく揃えるべく、露出はBを2倍にしてあります。これは経験上の判断ですが、多くの方が同じ感覚を持っていることでしょう。
それぞれ、Stella Image3にて、ダーク補正後(フラット、スポットノイズ補正はなし)、自動レベル補正(Min5%,Max98.5%)でレベルを揃えました。
これでB画像の最小値916,レンジ628、R画像最小値926,レンジ739です。
R画像の方が多少、階調豊富ですが、ほぼ画像の質という面では揃えられたと思います。画像処理は、デジタル現像処理(エッジ0.4)を行っただけです。

さて、いざ比較してみると、その解像感の差は歴然で、B画像が圧倒的に良いです。
これはノーフィルタで撮影を続けている私にとっては、まさに戦慄すべき結果となってしまいました。

B光の解像力がなぜ良いかを考えてみましょう。
まず、
B光、すなわち、短波長の光の方が本質的に解像力が高いことがあげられます。
600nm(赤色)で撮影するのと400nm(青色)で撮影するのとでは、口径10cmと15cmほどの違いがあります。月面や太陽面などもより短い波長での撮影はより高解像の画像をもたらします。
しかしながら反面、短波長の方がシーイング(大気のゆらぎ)の影響を受けやすいため、その点も考慮する必要があります。

次に、赤い光、つまり長波長の光ではより深いところまで見通せます。
赤外線を使えば、暗黒帯の向こうにある星々を見通せることをご存じかと思いますが、そこまではいかないにしても、赤色光であっても、多少は暗黒帯を見通すため、銀河の暗黒帯のコントラストが弱められてしまうことが考えられます。
上のM33の画像を見ても、B光の方が暗黒帯がはっきりとしているのが判ります。

今回の作品では特に後者の理由によるところが大きいように思います。
つまり、ノーフィルタでは、近赤外光まで透過するため、最も解像度の面からすると不利になってしまいます。
実際に銀河の撮影で赤外光をカットすれば良いことはCANでも報告されています。
B光での撮影はさらにこの考えを推し進めた形になります。
また、渦巻銀河では、恒星雲などB光でないと写りにくい模様があるのも、この解像感の差の一因のようです。
全波長を使うL画像では恒星雲のコントラストは弱められてしまいます。

しかし、B光での撮影は超長時間露光を強いられますし、同時間で撮影した階調豊かなL画像に強力な画像処理を施した方が良い結果が得られるかもしれません。
ただ、長時間露光を厭わないのであれば、B光による長時間露光を試す価値はあると思います。
下の画像はB光を輝度信号としてLRGB合成を行ったNGC2903です。

R200SS ST7E IDAS製RGBフィルター  B=10分×4,G=5分×2,R=5分×2


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