冷たい方程式〜ダークとバイアス〜


SFが好きな方なら、割と聞く言葉ですが、今回は全く関係なしです(^^;
ダークとバイアスの関係についてのお話です。
下は、とあるカメラのダーク画像です。
 
この画像の一部の水平プロファイルを切り出してみます。
ProfileDisplayを見てください。
そうすると、画像の輝度が平均100countであることが分かるでしょう。これがいわゆるBIASです。
その上に白点(いわゆるダークノイズ)がスポット上に乗ってるのが分かるかと思います。
つまり、ダークフレームはBIAS+ダークノイズということになり、ダークノイズはすべてBIASの上に載っているのです。
ライトフレーム(映像信号)も、もちろん、BIASの上に載っています
つまり、通常の状態であれば、
ライトフレームからダーク減算を行うことで、BIASも自動的に減算されますので、BIASフレームを意識する必要はまったくありません。
 
ところで、ダークノイズはCCDを冷却することで、減ることはみなさんご存知だと思います。
一般的に、約7℃冷却することでダークノイズは半分になるといわれています。
お、冷たい方程式@発見ですね(^^;
しかし、ダークノイズは半分になっても、BIASノイズはそのままです。
 
また、ダークノイズは、時間に比例して増大していきます。
冷たい方程式A発見ですね。
でもね、これもBIASはいっくら冷やしても(基本的に)変わらないですよね。
つまり、BIASとダークノイズを切り離して考えると、ダークノイズ自体は計算できるので、いろいろと美味しいことができそうだと思いませんか?
 
でも、ステラではダメなんです。
BIASの扱いについて、考慮されていないからです。
ところがMaxImDLなら、ソフトで自動的にマッチングとってくれちゃうんです!!
矢印カーソルのとこみてね。
Auto-Optimizeってあるでしょ!
BIAS画像を用意して、Dark画像はこのAuto-Optimizeで設定すると、画像からマッチングをとってくれて、ダークノイズを最適化した上で減算してくれるのですよ!!すごいね〜。
FreeSoftのDeepSkyStackerでもこれくらいやってくれるっぽいですがね・・・
設定項目はありましたからね。
MaxImDLは持ってないけれど、興味がある方はまずはDeepSkyStackerでチャレンジしてみるのもテかもしれません。
 
なお、MaxImDLでは、Auto-Scaleという設定もできます。
これは、先に述べた様に、ダークノイズは時間に比例しますから、単純計算でBIASを引いた上で、ダークフレームを1/2にして・・・・という作業を行って減算してくれます。(・・っと思います ^^;)
 
さて、では実際にはどうなのでしょう?
ちょっと比較してみました。
CV-16MEで-15℃5分露光で撮影した画像に、-15℃10分露光で撮影したダーク画像3枚の平均をとって減算してみました。
 
 ステライメージ6にてダーク減算。 
 
MaxImDLにて Auto-Optimizeにてダーク減算
通常なら、アホですね(笑)の一言で終わりそうです。
実際、ステライメージで単純に減算した方は穴だらけですねえ・・。やっぱアホですね。
ところがマキシで、BIAS画像を入れて、AUTO-Optimizeで同じダークを引いた画像は・・!
ちゃーんと、ダーク減算できてるでしょ?多少ノイズは残ってますけど、まあ、CVだと温度制御いまいち君ですのでこれくらいは残るんで・・。
今回は、Auto-Optimizeを使ってますが、Auto-Scaleでも良かったとは思います。同じ温度設定ですからね。
しかし、Auto-Optimizeでは白点を見て、それにあわせて減算してくれますから、実のところ、露光時間の違いだけではなく、温度が違っていても全然okなんです。
あれ?信用できませんか?仕方ないですね・・
 
 ステライメージ6にてダーク減算
 
MaxImDL4にてAuto−Optimizeでダーク減算 
今度は、-10℃10分のダーク画像を3枚平均とって減算してみました。
もう出鱈目ですね。
でも、ステラ側は穴だらけになってますが、マキシ側はちゃーんとマッチングとってくれてるでしょ?
つまりですね、BIASがあれば、ダーク画像を毎回その都度撮らなくてもいいばかりか、温度も露光時間も気にしなくて良くなるんです。
つまり、ダークを取ったつもりが周りが明るくなっていて光が入っていたとか、ダーク取り忘れた!という事態があったとしても過去のダーク画像があれば、それで、対応可能どころか、ひょっとしたらより高精度でダーク減算を行うことができる可能性があるのです。
 
もちろん、マッチングはできるだけとれた方が良いので、現地でのダーク画像1枚(宇宙線が入るカメラなら3枚)とあとはやはり現地でのバイアス画像を8コマ以上を撮影しておけば完璧なダーク減算ができると私は考えています。(んでも、M42の-15℃10分のダークと-10℃10分のダーク減算画像・・ほぼ全く同じ結果ですから・・ここまでこだわる必要はないのかもしれませんが・・・)
なお、ダーク画像、バイアス画像とも、できれば、光学系につけたまま撮影した方が良いと思われます。電子部品の温度特性等でバイアスも若干変化することが考えられるので、、、
光学系から外すと風の当たり具合というか、放熱の具合が変わりますからね・・。
まあ完璧を期するならば、のお話です。
たぶん、そこまで考える必要はないのでしょう・・。
 
さて、温度が関係なく高精度のダーク減算が引ける!となると、実は、このAuto-Optimize機能は、実のところ、冷却CCDカメラよりもデジカメ画像に向いているのではないか・・・
少し試してみました。
 
ステライメージ6
 
MaxImDL
オリンパスのE-300によるM8です。
8分露光のダーク画像4枚を使って減算してみました。
ベイヤー状態で画像を読み込んで、それぞれのソフトで減算してから、ステライメージ6にてカラー化、自動レベル調整で揃えています。
なお、BIASはISO感度を同じ設定で、1/8秒で、16コマ程撮影したものを平均化(マキシでAvarage)したものを使ってます。S2Proは解析したところ、2秒と4秒で明らかに映像エンジンでの処理のかかり方が明らかに変わるんで、短時間露光画像をBIASには出来ないのですが、とりあえずE-300とかEOS40Dではさほど画像の質は変わらなさそうなので、そこそこ短時間露光のダーク画像をバイアスとしてみました。
 
ステライメージは明らかに引きすぎてS/Nを大きく損ねていることが分かります。
マキシ側はマキシ側で、引きすぎている点は少なくなりましたが、多少、輝点が残っているところもありますが・・
星雲のS/Nはマキシ側に分があると思いますがいかがでしょうか。
少なくとも、その日のダークを使わなくても良いというだけでも大きなメリットだと思いますが・・・
困ったことがいくつかあります。
マキシでデジカメ画像を読み込むと、保存がFitsになってしまいます。つまり、PhotoShop等の優秀な現像ソフトが使えません。
また、EOSKissDNの様に、AMPノイズの影響が大きい場合、その影響はまんま残ってしまいました。
ご存知の様にあのノイズは時間とともに侵食してくるのですが、MaxImDLでのAuto-Optimizeではあのような幅広い低輝度のノイズには対応できません。
また、E-300はイメージセンサがCCDですが、昨今のCMOSカメラでは内部の映像エンジンによる処理の影響が大きく、Auto-Optimizeでは上手く処理しきれないかもしれません。
 
まとめです
BIAS画像を得た上で、AutoOptimize機能を使うことで、
・より高精度なダーク減算が実現する(極力マッチングとってくれるわけですから!)
・別の日に撮影した、温度が違うダークでもok。良好な減算結果が期待できる。
・露出時間が違っても、良好な減算結果が期待できる。
・より高精度でダーク減算行いたい場合は、都度現地でダーク1枚+BIASを撮れば良い。
・したがってダークライブラリなど、不要です!

まあ、10分ダークを8コマとかってうんざりだしね〜。
実際には過去のダークデータを流用してもマッチングをとってくれますし、マキシ上でライブラリ化もできますので、ダークデータのライブラリ化も悪い方法ではないです。
ただ、AutoOptimizeを使うのが前提であれば、当日ダーク1枚とバイアス画像を撮った方がよほど良いですよ。
露出もその日の最長露出のダークデータだけ取得しておけば短い方は演算でマッチングとれます。

バイアスはそんなにうるさくないので、季節ごとくらいでもいいかと。
個人的には仕事柄、環境試験機でBIASが多少変動するのは知ってるので、せめて夏用、冬用の2種類は用意して欲しいですね。カメラにも依るのかもしれませんが・・・。
ただ、バイアスは枚数は稼いだ方が良いかとは思います。8枚ないし16枚くらいでいいでしょう。短時間露光のダーク画像ですので、まともにダークフレームの枚数を取るよりは圧倒的に楽チンです。
ね、BIAS撮るといろいろと応用効いていいことありそうでしょ?
 
素晴らしい機能を教えていただいたグレーテルさんには本当に感謝してます!
 
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