7to8


ST7to8。ST7を8にしてしまおうという、通称728計画である。

換装方法、調整方法等は、ST7MEと同等であるので、そちらをご覧頂くこととして、
ここでは、ST7Eを8ME化する場合に問題となる点、及び、自分なりに考えて実行した解決方法を記載することにします。

いずれにしても未だ完璧なものは出来ていませんが、現状、充分、実用に足るものはできています。

■CCDの取付の問題

ST7EにKAF1600系のCCDを刺す場合、先ず最初に問題となるのは、取付です。
幸い、KAF400系とKAF1600系CCDは、ピンコンパチなので、ソケットにそのまま、刺さりますし、動作は問題なくします。
しかし、CCDを固定する為のネジ穴の位置が、異なるため、ソケットに刺したテンションだけでの使用となります。
上からネジで押さえつけないため、CCDがアルミブロックに密着しないため、実際のCCDが冷えないこと、CCDチップの抑えがないため、CCDチップがやや傾いたままになるのではないかという懸念があります。
CCDチップのアオリ角の許容値に関しては以下の式より導かれます。

例えば、F4.8で使うとして、
焦点深度=2×4.8(Fno)×9μ=86.4μ=0.0864mm
ズレ量Lは、CCDチップの長辺で良いでしょう(ホントは対角でやるのが正解しょうけど・・)。ST8Eならば、13.8mm。
傾きθ=Atan(0.0864/13.8)
    =0.3587
Atan(アークタンジェント)はtan-1ですからね。関数電卓を使えば簡単に計算できると思います。
約0.36・・・
意外とシビアーな値。
しかし、CCDチップのアオリに関しては、さしあたっては、考えないことにしました。
これまでの経験上、相当あからさまに斜めでない限りは問題にならない様だったからです。
これは、望遠鏡が、元々中心部のみシャープで、周辺ほど収差が大きくなるせいもあるでしょうし、シンチレーション等の影響もあるかとは思います。
さらにいえば、1度って結構大きな傾きですよね。
DIPソケットにさすだけとはいっても、傾きは1度以下になることでしょうから、余り気にしても仕方がないのかもしれません。
とゆーことで、アオリに関しては、割り切って考えないことにしました。
但し、明るく均質な光学系で、それなりの焦点距離がある場合は、さすがに実用にはならないかもしれません。

さて、そうなると、後の問題は、冷却です。
先ほどにも書いたように、CCDチップを抑えないため、ペルチェ素子とを繋ぐアルミブロックへの密着度が悪い、っつーか、CCDがアルミブロックから浮く=冷えねぇ
と、いうことが考えられます。
これを回避するため、左の写真にあるように、CCDの下に、0.3m厚の銅板を敷くことにしました。

銅板の下に熱伝導テープを貼り付け、アルミブロックに固定してあります。
この上に、熱伝導グリスを塗って、CCDを貼り付ければ、恐らく冷却の問題に関しては製品とほぼ同等レベルになっていると感じています。

なお、もしかしたら、CCD下のアルミ台座ですが、外せるかもしれません。
プラスチップの皿ビスで止められているので、そこを外せば、アルミ台座が取れるかも・・。
もし、そうであれば、CCDのパッケージにある固定穴にあわせ、アルミ台座に穴を開けて、タップをたてれば、完璧なものが出来ます。
アオリの心配もなくなります。
CCDを置いたところ。
熱伝導グリスはやや多めにしています。
若干、浮いている感じはありますが・・・
最初はソケットへのCCDの差込が甘く、起動せず焦りました。


あとはガイドCCDを調整してしまえば、OKですが、ガイドチップカバーも、KAF400用そのままでは使えません。
適宜、削りが要ります。

左は、自分ではなく、先に728計画を実践されていた方のカバー。
ピカピカに光っているのが切削してある部分。
裏側になるので、問題になることはないと思いますが、実際には、
切削後は黒塗装した方が良いでしょう。

ガイドCCDの調整は、カバーがネジ止め出来ない関係上、やや苦労しますが、不可能ではありません。
しかし、ST7とST8ではそもそもCCDの中心位置から、ガイドCCDミラーまでの距離が違います。
ガイドCCDとメインCCDを同焦点化を図ったとしても、どうしてもケラレの影響が残ってしまい、150万画素が活かせません。
下は、VISACをF7で使用したときのけられの様子です。
画像はソフトビニングで元のサイズの1/4に縮小してあります。
けられは約10万画素分ですが、当然、F値が明るくなればなるほどけられが大きくなります。
何はともあれ、セルフガイドも良好です。
とりあえずは改造成功ということで、Ver1.0の完成であります。

■ケラレ対策
約10万画素前後分とはいえ、やはりけられでかなりの画素を失うのは面白くないものです。
そこで、少しでも改善の余地はないだろうかと思っていたところ、ちょうどminiCANPに参加した時にmotoさんから一つのアイデアを貰ったのでした。
参考になったのは、ハーフHαフィルタ。ズバリ、ガラス切りです。

メインCCD部だけにフィルタを置いた場合、焦点位置は、後ろにずれます。
つまり、ガイドCCDとの同焦点性が崩れます。
崩れますが、メインCCDの焦点距離が後ろにずれる分、メイン−ガイドCCD間の距離が短くて済むようになります。
タナカさんに相談したところ、1mm厚のガラスを入れることで、焦点位置は、後方約0.3mmずれていきます。
今回は、透過率に優れている、Kenkoのプロテクトフィルタを購入して使うことにしました。
厚さは、2.5mm厚を期待したのですが、残念ながら、2mm厚でした。
しかし、これで若干、焦点位置を稼げます。

ガラス切りを使い、ガラスを切り、
そして、メインCCDだけに被る様に載せます。
当初、ガイドCCDミラーに載せて、斜めに配置したのですが、
これは大失敗。
光学的に非点収差が生じる(タナカさん談)のと、迷光を拾いまくるようで、ダメダメでした。
と、いうわけで、平たく置いた上、黒テープで迷光対策を行ったのが、左写真です。
現時点(2004.12)では、この状態で使っています。
バージョンを付けるとしたら、Ver2.1というところでしょうか。
MT160+レデューサで撮像した画像です。

けられに関しては明らかに減少しました。
しかし、その変わりにまた新たな問題が生じています。
それは、どうやら、ガラスを切った為に、切り口で生じていると思われる反射光か、それとも、切り口を透過してきた透過光か・・・
いずれにしても、画像上方に明るくなっている部分があります。
また、どうも、特に画像左上のやや明るい部分からは時折、シャッタセンサの赤外光をが入ってくるようで?
とりわけビニング時には、影響が顕著に表れ、問題となります。
まだまだ改善の余地があるなあ・・・
透過光であれば、改善はたやすいのですが、ガラス端での反射光だとするとさすがに手の打ちようがありません。(でも、透過光という気もするのですが・・・)
正直、このままでは、Ver1.0と余り変わりがないし、なんとか改善を図りたいところです。

以上、ST8E化に関する問題点というか、ぶつかった壁というか。
それを述べてきました。
はっきりいって、現時点では、けられという点で、製品版のST8MEと同等の性能を得ることが出来ていません。
従って呼び名としてもST8MEといよりは、拡張ST7Eというか(ExST7E?)、ST7カスタムというか。そんなところでしょうか。

しかし、やはりメガピクセルは良いものです。系外銀河であれば、ST7MEで充分と思っていましたが、
正直、ST7カスタムを使ってしまうと、たとえ小さい被写体であっても、余白部分しか増えないとはいえ、メガピクセルの方が良いです。
もう戻れませんねー。
再度、迷光対策を行い、少なくとも、迷光による明るい部分をなくしたVer2.2にしたいと思っています。
さらに厚みのある優れた透明フィルタがあれば、けられは駆逐できそうな感じもしますので、その点の改善も図ってみたいと思います(ガイドCCDの再調整が必要になるのがちと辛いところですが・・)。

傾き(アオリ)に関しては気にはなってはいますが、概ね、自分の所有機材では問題ないようですので、さしあたってヨシとしよう。
もともと、自作って、完璧なものを追求するよりも、実用上、充分なものが得られればそれで良いのではないかとも思います。
時代は変われど、天体写真の基本は自作ですよね!?







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