C/2006P1 McNaught彗星


非常に明るくなることが期待された彗星ですが、国内からは近日点通過前の日没直後の超低空にしか姿を現さないため、観測は困難を極めました。


2007.01.10
Nikkor24mmF2.8→F4 FinePixS2Pro 1/10秒 17:20頃

マックノート彗星、当初は国内からは見えないものと思い、撮影も観望もする予定はありませんでした。
ところが国内でも捉えられているという情報が耳に入ってくると、これは自分もぜひ見られるものならば見てみたい!
いや、見なければ!!という想いが強くなりました。
然し、冬どきの夕方の彗星はサラリーマンにとっては苦しいもの、ましてや、この彗星は日没直後でなければ沈んでしまいます。
そこで、定時直後に会社の5Fにカメラ三脚を設置し、撮影することにしました。
カメラレンズは、広角であれば適当にとってもどこかに入ってくれるだろう、ということと、どことなく、C/2004F4ブラッドフィールド彗星の印象があったのでしょう。もし増光しているならば、広角レンズでも充分・・・と思ったわけです。
とりあえずは捉えることは捉えられましたが、シミの様にかすかな姿でした。
とほほ・・。
また位置も思った以上に低空で、この彗星の撮影の難しさを思い知らされました。

それから、いろいろと調べ、望遠レンズで捉えなければならないであろうことが判りました。
そこで、翌日はNikon200mmを持って来たのですが、低空に雲が張っておりあきらめ。
翌々日も雲がありNGでした。


2007.01.13
BORG76ED屈折望遠鏡 FinePixS2Pro 1/1000秒×14枚 14:45頃

白昼に捉えたマックノート彗星です。
すでに白昼でも眼視で見えるという情報を得て、ますます低空・悪条件になる夕方での撮影は諦め、日中での撮影を試みました。
彗星は近日点通過したばかりで太陽の極々近くにいるのですが、望遠鏡で見てみると、
きらりと彗星核が輝き、それだけではなく、ちゃんとテイルを引いているのまで見えるではないですか!

BORG76EDにMasuyama25アイピースをつけた時にちょうど上の写真の様な姿を見ることができました。
こ、これは凄い!!!

シャッタースピードは、撮影した直後のヒストグラムを見ながら決めました。
こういう点はデジタルカメラの大きな恩恵だと思います。
おかげでベストな画像を得ることができるわけですから。
シャッター速度は、1/1000秒となりました。
白昼に見えるのも凄いが、1/1000秒で写る彗星ってのも凄い!
感動しっぱなしでした。


2007.01.14
BORG76ED屈折望遠鏡 FinePixS2Pro 1/1000秒×10枚 15時半頃

翌日、日曜日のマックノート彗星です。
やはり日中の撮影です。
眼視でも容易に幅広のテイルが見え、昨日よりもさらに尾が明るくなっている様でした。

この日はいろいろとやろうと、まず冷却CCDカメラに赤外フィルターで挑むものの、迷光対策処理がかなりしっかりと、
してないと迷光で難しい様でした。
その次に、EOSKissデジタルを用いましたが、S2PROではあれほど容易に見えていた彗星核がよく判らず、フォーカス合わせに手間取ってしまいました。
MaxImDSLRによるコントロールにて確実なフォーカスを、とも思ったのですが、途中でフリーズするなど、トラブり、
諦め。
くっ、、昨日は意外と簡単に写せたというのに・・
時間ばかりすぎていく。
仕方ないので、Kissデジには見切りをつけ、S2PROを引っ張り出してきて撮影する。
あ、ファインダーで彗星核が見やすい。
なんだかんだいっても、いざというときの頼りです。S2PRO。
なんとか無事、彗星を撮影することが出来ました。

尋ねてきた友人と撮影を行い、彗星が隣家の影に沈むまでこの大彗星を見送りました。
日中でも見えた大彗星として、今後も語り継がれていくことでしょう。

南天ではウエスト彗星を凌ぐほどの見事なテイルをたなびかせているようです。
この大彗星が国内では夜間に見られなかったのは、本当に残念です。


彗星は南に去り、もう撮ることはないだろう・・と思っていました。
ところが!
南天で素晴らしい姿を披露した彗星の尾は遙か北半球まで届き、その姿が日本からでも捉えられたのでした。
それを知ったのは1/19晩でしたが、翌20日、21日は天候に恵まれません。
そして1/22日。
定時で仕事を切り上げ、速攻で撮影に向かう。
撮影地は、定時後では時間がなく、空の綺麗な山まで出かけることができない。
結局、いつも撮影に使っている獅子が鼻公園へと急ぐ!
幸い、17時半には到着することが出来た。

ところが、ここは、東天は空が良いのですが、西空は、丁度、町の上となってしまいます・・。
おまけに、今日は月がかなり大きい。

かなり、分が悪いナァ・・・。
しかし、透明度はなかなかに良い。西空低空の雲が気にならないといえばウソになりますが・・・・。
期待は高まる。
知人と共にカメラをセットし、シャッターを切りはじめます。

今回の主力はやはりS2PRO、でもバックアップとして、Kissデジも持ってきた。
ただ、Kissデジは先日の撮影の際に、LPS-P2を抜いてしまったままでした・・(カメラレンズは収差でぼけぼけになる)
カメラレンズは、S2PROに24mm広角レンズを、EOSKissデジタルには、35mmを使うことにしました。
広角レンズは、1月10日の時の例もあり、躊躇しないではないですが、今回は広角レンズで大丈夫だろう。
S2PROはフォトガイドに載せて、Kissデジは固定撮影です。

国内での撮影例と、ステラナビゲータでシミュレートして見てきた限り、
金星より若干北寄りにテイルが出る筈です。
したがって金星よりやや北寄りを構図に撮りました。
月がジャマですがこればっかりはしょうがないですね。

ところが、シャッターを切っても切っても肝心のテイルは写ってこない。
くっ・・・ダメか・・?
との疑念がよぎる。だが、、、撮るだけだ。
19時までとにかく撮影を行いました。
だいぶ冷え込んで来たので、これにて終了。

帰宅後、早速、画像を見てみることにしましたが、
先ず、メインのS2PROがRAWではなく、JPEGで保存してしまったことにガッカリ。
おっかしいなー。切り替えたつもりだったのですが・・。

画像も見る限り、それらしいものは写っていませんでした。
Kissデジタルの方は、RAWで保存していましたが、現像してみてもそれらしいものはナシ・・・
どっと疲れました。


ところが、後日になって再度、処理を行ったところ、淡いながらもなにやら写ってることに気が付いた。

2007.01.22
Nikkor24mm F2.8→4 FinePixS2Pro 3分

しかし、月がすぐそばにあるので、ゴーストかもしれない・・・
2台のカメラで撮影していたのが幸いでした。比較・検討ができます。
Kissデジ+35mmF1.4→F2.8、S2PRO+24mmF2.8→4、と2台のカメラに写っているのでゴーストなどではなさそうです。
多少時間をおいた画像で比較して雲などではないことも確認とれました。
光学系が異なる画像での比較検討から、月光によるゴーストでもないことを確認できましたので、
どうやら、これが彗星の尾ではなかろうかと思われます。

○を囲んだ部分が2つのカメラで確認できた部分です。
画像は、元画からぼかしをかけたマスクを作り、除算することで、光害成分と月光成分を除去しています。

あらためて、光害成分・月光成分を除去して縮小した画像を見ると、月がちょうどテイルの真ん中くらいにいたのか〜
と感じさせられます。
月を真ん中に入れて取っておけば良かったと思いますが、ここまでテイルが立ち上がっていたとは完全に想定外。
でも、どのみち、美しい写真にはならないですね・・・

翌々日、24日にも再度同じ場所で撮影を敢行しましたが、透明度も悪かったこともあり、今度こそ何も写ってはくれませんでした。
どうやら情報収集した限りでは、テイルの向きが若干変わったらしく見えなくなった様とのことでした。



もともと観測するつもりがなかったマックノート彗星。
しかし、この彗星は驚きの連続でした。
昼間に見えるわ、遙か南半球から伸ばしてきたテイルが見えるわ、常識を覆してくれた彗星でした。

南半球からの素晴らしい写真の数々を目にするにつけ、その立派な姿が北半球からは見られないのがとても残念に思います。
21世紀を代表する大彗星として、今後も語り継がれていくことでしょう。

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