FinePixS2Pro 1st Report

フジフィルムより発売されたFinPixS2Proを使っていくつか作品を撮影しました。
さすがにハニカムCCDは感度が高く、またノイズも極力抑えられており、天体写真でも満足がゆく
カメラに仕上がっているようです。
まだ充分に使いこなせているとはいえない状態ではありますが、その性能の一端をお見せ致します。
いろいろな使い勝手や、画像処理法などは次回更新時にでも紹介することができればいいな、
と思います。
・・・それまでに使いこなせるかな〜
とりあえず、今回は撮影の成果をご覧いただきましょう。

月 1/750秒 R200SS+コマコレクター コンポジットなしの1枚画像。
なにはともあれ、撮ってみた。望遠鏡はR200SS+コマコレクター直焦点で決して向いている機材ではなく、
シンチレーションも悪かったので、S2Proの性能は出し切れてないだろう。
でも、フィルム代がかからないと思うととりあえず撮っておくかあという気分にはなります (^^;
ISO設定は変えるの忘れて1600だったかも・・・。

M35 R200SS+コマコレクター 露出2分 1枚 ISO400設定 外気温10℃程度
たった2分の露出で驚くほど暗い星まで写し出されています。また画像処理済みとはいえ、
各星々の色合いがしっかりと描写されていることも注目に値する。
特に左上の小さい散開星団の赤い星々とM35の白い星々の対比が美しい。
ST7Eをこれまで使っていた身としてはこの視野の広さは驚嘆するしかない。

M1 かに星雲  R200SS+コマコレクター ISO400 2分×3枚 外気温13℃程度 
超新星残骸であり、惑星状星雲とはちょっと光の性質が異なる。
そのためか、違和感のない非常に自然な色彩になった。
雰囲気としてはカラーネガフィルムのようだ。
しかし、特徴である、赤いフィラメントははっきりとは描写されない。

M27 亜鈴状星雲 R200SS+コマコレクター ISO400 5分×3枚 外気温0℃程度 富士山
惑星状星雲など、特定の輝線を発する天体はどうしても、酸素輝線を拾い、
赤いHα(水素輝線)は拾いにくいため、どうしても正常に発色しない。
・・・正常な発色?
もし肉眼でこの星雲の色が見えたら、やはり酸素輝線に強く感じ、
Hαはほとんど見えない。きっとこれと同じ色に見えることだろう。
そういう意味ではこれが正常な発色なのかもしれない。
この色彩に違和感を覚えるのは、見慣れているフィルムやCCDによるカラー画像
の発色と比べてのことにすぎないのだから。
とはいえ、この亜鈴状星雲は緑色の透明感が美しく、個人的にはまだ許せるのですが・・・。

M57 ドーナツ星雲 R200SS+コマコレクター ISO400 5分×2枚 外気温0℃付近 富士山
・・・さすがにこのドーナツは不味そうだ。
惑星状星雲は明るいものが多く、大口径では眼視でも色彩を認めることができるものが多い。
そういう眼視的発色を求めるなら、S2Proはきっと答えてくれる。

M42 オリオン座大星雲 R200SS+コマコレクター JPEGで保存

S2Proの色彩はこの画像1枚が物語っている。
中心部の緑、羽根の部分の赤と、眼視に非常に近い色合いなのだ。
長らく写真をやってこられた方には到底受け入れられない色彩かもしれないが、
個人的にはこういう豊富な色彩は好きです。
 
フィルムでいえば、スペリアズームマスター800に非常に近い色彩を示す感じがします。

M45 すばる R200SS+コマコレクター JPEG保存

回転装置をもっていないため、構図が窮屈でヘンになってしまった。
まあ、テストなんだからいいか。
というわけで撮影してみたすばる。
青いガスの流れは予想以上によく写った。デジカメとしては驚異的といえる。
しかし、反面、ノイズ除去に苦心した経緯がある。外気温が高かったせいもあるし、
ノータッチガイドで済ませるため、1枚辺りの露光時間は長くても2分に止めたせいもあるかもしれない。
・・・あまり長く露出をするとノイズが目立つかも、という考えもあったが、、、
やはり1枚に5分程度の露出は与えるべきかもしれない。 


NGC2024付近 R200SS+コマコレクター ISO1600 5分×3枚 JPEG保存 
ガイドミス覚悟で5分露光した画像。すばると同夜の撮影。
画像を小さくしているせいもあるが、やはり1回あたりの露出が長くなれば、
画像が引き締まってくるかもしれません。
とはいえ、露出が長いほどノイズが出てくるため、外気温との兼ね合いで、
露出時間を決めないとならない。
馬頭星雲は非常にかすかにしか写っていないが、NGC2024はしっかりと
描写されていることも注目。
つまり、赤い星雲であっても眼視で確認できるものに対しては写し出すこと
ができるといえる。
肉眼では捉えにくい馬頭星雲はかすかにしか写らない。
反面、青い星雲に関しては淡い星雲まで写っているように思う。

NGC2237 ばら星雲 R200SS+コマコレクター ISO400 露出10分×10枚+5分 計105分 外気温−2℃〜0℃ 富士山 西臼塚にて

ばら星雲です。撮影直後の液晶モニタに表示された時はその美しさに見とれてしまいました。
そこで思い切って長時間の露光をかけてみた。とはいえ、105分も露出したら、いかに0℃環境下とはいえども、ノイズまみれになるのは明白なため、1枚あたりは10分に止める。
10分×10コマと100分はほぼ同等の画像ができるのがデジタルの良いところ。むしろノイズの影響を考えれば、前者が良いわけだから撮影自体は楽なものである。
ばら中心部の水色はやはり酸素輝線なのだと思われる。眼視では主にこれが見えることになるのだろう。
この画像ではちょっと赤を強調してありますが、真っ赤な大輪の薔薇とは印象が異なり、やはり写真をやっている人からみれば、違和感が相当にあることと思う。
個人的にはこの豊富な色彩は結構好きなんですけどね。

なお、ISO400で撮っていますが、ISO1600にすれば露出が1/4で済むじゃん、と思った人もいるかもしれませんが、その答えは否です。
ま、その辺りはいずれ・・。


M31 アンドロメダ大星雲 R200SS+コマコレクター ISO1600 JPEG保存

月が残る中ではあるが撮影を強行してみた。
光害の影響下でも撮影が可能かどうかみたいためである。
もっとも、撮影している場所も、寮の前庭であり、外来光は直接は入らないようにしているものの、
空は明るい。月がなくても、夏の天の川は見えない程度、ファインダーの十字線が、暗視野照明なしで
見えるといえば、おわかりいただけるだろうか。
それでも星座はしっかりと結べるので、都会よりはずっとましな筈だが。
なお、このページの画像は特に断りがないかぎり、そこで写したものである。
富士山との差は、空の善し悪し意外にも、外気温,連続露出などファクターが多いため、
一概に空の違いとはいえない。

さて、結果はご覧の通りで、デジタルだけあって、冷却CCDカメラほど圧倒的ではないにしても、
光害にも強いようです。
これならば、町中であってもそれなりに満足のゆく結果を得ることができるのではないでしょうか。

NGC253 R200SS+コマコレクター ISO400 2分×9枚 

寮の前庭からは浜松市の光害のさなかを撮ることになるのですが、
それでもしっかりと写ってくれるのはまさにデジタルの強み。驚くしかない。
しかし、やはり光害の影響が大きいため、激しい周辺減光を生じてはいたが、
トリミングなどで、なんとか見られるものに仕上がりました。
青い周辺のハロと中央部の黄色いバルジの色もしっかりと描写されます。

M33 R200SS+コマコレクター ISO400 2分×5+3分 計13分 外気温13℃程度
1コマわずか2,3分でも合成すればこれだけ写るのだから、やはり基本感度(S/N)は非常に高いと思う。
しかも撮影地は決して暗いとはいえない夜空なのである。
しかし、残念なことに、この銀河の特徴ともいうべきHII領域は描写されていない。
否、描写はされているのかもしれない。右上の腕にある青白い塊は間違いなくHII領域のものだ。
青白く写るのはHαが写らず、OIIIのみが写っているからだ。
ナローバンドフィルタで元素分解撮像を行えば判るが、このHII領域はOIIIでも良く写る。
話が逸れたが、せっかくの彩りを添えるHII領域が赤く描写されないのは少々寂しい・・。

M81M82 R200SS+コマコレクター ISO400 10分×3+5分 外気温0℃程度 富士山 西臼塚にて

富士山で夜明け直前に撮影したM81とM82。
あまりの写りの良さに驚いてしまった。
撮影したばかりの背面液晶モニタでもM81の腕がハッキリと見えるのだから!

S2Proの得意とする天体はどうやら系外銀河のように思う。
ご覧のように非常に良く写り、解像力もまずまずあるようで申し分ない。

S2Proは対象を選べば現行のフィルムによる天体写真を超えるのではないかという気がする。
ただし、赤い散光星雲は苦手ですから、この点ではフィルムにかなうべくもありません。
系外銀河・球状星団などでは、フィルム以上の成果を得ることも不可能ではないと思えます。
(フィルムだとトリミングしちゃうしね)

夜明け  マイクロニッコール 55mmF2.8→F4 4秒 JPEG

固定撮影してみた夜明けの月。
無限遠マークに合わせただけでは明らかなピンぼけでした (T.T)

S2Pro First Report おわり




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