ISO感度比較についての考察


S2ProにはISO100〜ISO1600までの感度設定をすることができます。
暗い被写体である天体写真の場合、いきおいISO1600設定を選択してしまいそうですが、果たしてそれがベストな選択なのでしょうか。
いくつか画像を見て比較してみましょう。

ISO1600  30sec  外気温−2℃程度 ISO400 30sec 

まずは、同じ露光時間による。比較です。
フィルムをご存じの方には、ISO1600とISO400を同じ露光時間で比較するなんて、ナンセンスと思われるかもしれませんが、
デジカメのISO設定とは、カメラ内部の情報を電気的・画像処理的に増幅しているにすぎないと良く言われています。
もしそうであれば、ISO設定を変えても、もともとの情報量は変わらず、あまり意味がなくなってきます。

確かに、ISO400とISO1600とを比較すると、その感度差は数字の上では4倍あります。
また、出力レベルも、概ね4倍となるようです(ISO800,ISO1600では多少、傾向が変わりますが)。
しかし、これは電気的な増幅に過ぎず、実質的な感度、すなわちS/Nは変わらないはずです。
さて、結果はどうか?といえば、両者に4倍の感度差を感じるでしょうか?
答えは否。
しかし、ちょっと見では、ISO1600の方が若干、淡い部分の写りが良いように思います。
これには恐らく、トリックが隠されているのですが、、、それはまた後述しましょう。


下はカメラ的に、比較してみた比較画像です。
すなわち、ISO1600では15秒、ISO400では4倍の60秒という具合に、露出時間で出力レベルを揃えてみました。

ISO1600 15秒 ISO800 30秒 ISO400 60秒 ISO100 240秒

出力レベルはほぼ同じ程度になりました。
しかし、ISO1600ではノイズも増幅されてしまいます。画像のなめらかさ、淡い部分の描写では、最も感度が低く、また露出もかけているISO100が一番です。
結局のところ、露出時間を延ばした画像の方が美しい映像を得ているという結果になっていると思いませんか?
そうですよね。え、当たり前だって・・?そりゃあ、そうですけど・・
結局、ISO1600にしたからって露出短縮になんてならないんですよ、ってことが言いたかったのです。

実際に、これまでのテスト撮影で、ISO1600とISO400の間の両者の間には少なくとも、実質的に4倍の感度の差がないことを確認しています。
ISO1600では、ISO400設定よりも若干、S/Nも向上するのですが、実はこれには前述したようにトリックがありました。
どうやらS2ProではISO800以上の感度設定を行った場合、やや強めにぼかし(Smoothing)が低輝度部に行われるようで、背景のざらつきがならされ、微光星のシャープさが失われているようでした。
もちろん、ぼかしが入ることによって、みかけ上、S/Nが向上はします。

M42画像撮影時は強風でだいぶ星像がぼけてしまっていたりしますから、下のNGC253画像で微光星は見てください。一応、一番上のM42画像を撮影時はまだ風がなかったとは思いましたけど・・。露出を変えて写したヤツは風のせいで長時間露光のISO400やISO100の方が微光星が甘くなっちゃってるし (^^;
とりあえず背景のざらつきは上のM42画像で見られますから、よーく確認してくださいね。ざらざらがならされているのが判ると思います。
下のNGC253画像では背景のざらざらはコンポジット効果でISO400の方も良くなってますからね・・(ああ、ややこしい・・)
いい比較画像を用意できなくてごめんなさい。

ISO1600,ISO400共に露出2分×3フレーム 加算コンポジット画像を比較

しかし、このタイプのぼかしが入った画像は経験上コンポジットの効果が薄まります。
コンポジット済み画像を比較したNGC253画像では星雲の腕の滑らかさが極若干とはいえ、ISO400の方が上であると思いませんか?実のところ、前述のようにISO1600とISO400では正確に輝度値が一致させられないため、背景で画像レベルを揃えていますがレベル調整が適切に揃えられないので、はっきりとは断言できませんが、これまでの経験上でもISO1600よりも画像処理までトータルに考慮すれば、ISO400の方が良い結果であったといえます。
つまるところ、コンポジットを行うのであれば、ISO800以上の設定では、S/Nも向上しにくい、解像力も劣化する、と、なんら益をもたらしません。もっとも極若干の差だとは思いますよ。でも天体ってその若干の差が大切じゃないですか。
かといってあまりに低い設定でも、良くありません。
S2proではリニアリティが直線ではありませんから、適正露出が存在してきます。なるべくダイナミックレンジいっぱいとなるように写した方がいい画像となります。
そう考えると、多くのケースにおいてISO400で撮影を行うのがベターとなるように思います。

しかし、これも扱う光学系や赤道儀の精度、光害など撮影環境によって異なってくると思われます。
光害地の場合、ISO1600設定では、わずか30秒露光が限界で、それ以上の露出をかけると飽和してしまいました。しかし、ISO100設定にすれば4分もの露出をかけることが可能となります。
もし、都会地での撮影を考えた場合、感度設定は極力落とし、なるべく露出時間を長めに与えた方が美しい天体写真を得ることができるといえます。
しかも、S2ProもCCDだけあり、光害に強く、肉眼では3等星位しか見えない状況下でも、冬の透明度の良さに助けられ、かなり淡い星雲まで捉えることができました。
具体的にはプレアデス星団のメローぺ星雲や、フレイム星雲(NGC2024)が写せました。

これはフィルム撮影ではとても考えられなかったことです。
S2proは町中であっても楽しむことができそうです。

話が少し逸れてしまいましたが、赤道儀の精度が十分ではなく、どうしても短時間しかガイドできない場合も、ISO1600とした方が良い結果となるかもしれません。
また、夏場などでは露光時間の延長はダークノイズの影響を大きく受けるようになりますから、一概に低感度が良いとはいえなくなります。

しかし、ガイド撮影環境が整ってさえいれば、やはりISO400での撮影が最も良いと考えます。

(2004.06追記)
CANP2004にて、蒔田さんが、ISO800以上ではローパスフィルタが強くかかることを定量的に証明してくださいました。
また、蒔田さんもS2PROでのベスト感度はISO400となるとお考えのようでした。

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